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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
2章 迫る大軍、迎え撃つ
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28 巨きな朝の目覚め

森の縁に夜露がきらめくころ、巨大な人影が仰向けのまま静かに眠っていた。

長い金髪が草を撫で、呼吸に合わせて大地を揺らす――はずだったが、今はまるで自然そのものが息をひそめ、見守っているかのように。


■リアーネ視点

薄明の空を薄い雲が流れる。

草木がざわめき、折れた枝先からは、軋むような微かな音が漏れる。

リアーネの吐息が白く凍り、胸の上下に伴う冷気の震えが肌を刺した。

その金色のまつげがゆらりと動き、瞳を開く瞬間、筋肉が一斉に引き締まる“ピキッ”という感触が伝わった。

彼女は体を起こし、朝日を背に両脚を揃えた。

そっと足裏に重心を移す――トン。

露を含んだ草が押し潰される鈍い音だけが響き、土塊は微動だにしなかった。


「……これなら、大丈夫ね」


12メートル、26トンの体重が生む圧力が、気をつければ街を壊さずに歩ける――その確信が、胸にそっと灯った。


■門番視点

林を抜ける小道の先に、どこかで見た“影”があった。

「……じょ、冗談だろ?」

門の上の青年は声を詰まらせる。隣の新米兵も目を見開き、思わず背後を振り返った。


夕闇の塔か――否、山かと錯覚するほど巨大な女が、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。

その一歩一歩に舞う葉の音と、吐息の白さ。だが大地は静寂を保ったままだ。


■リアーネ視点

門番の顔を見下ろし、リアーネは腰を折って笑いかける。

「おはよう、門番さん」

声は深いが柔らかく、冷えた朝の空気をかき分けるようだった。


「リアーネさんか……また、でかくなったんだな」

青年の声が震える。汗を拭いながらも、その目には畏敬の光が宿っている。


「ちょっと成長期なの。気にしないで?」

彼女の笑顔は、昨夜と変わらぬ優しさに満ちていた。


リアーネは少し離れた場所に腰掛け、街を一瞥した。

膝下ほどの塀、肩まで伸びる屋根――人々はまだ眠りから覚めはじめたばかり。


彼女の視線は地図のように街の隅々を走る。

細い路地、郭門の歪んだ石畳、苔むした瓦屋根。

火が放たれやすい倉庫区画。敵が群れをなして押し寄せる可能性のある平地。


「塀の南端は開けすぎ、逃げ場が少なすぎる。西の倉庫は古くて危険……」

背後の風景は“情報”に変わり、リアーネの脳裏に作戦が描かれていく。


「まず南門以外は封鎖する。北の段差も、東の窪地も、私は崩して瓦礫に変える」

吐息が白く立ち、胸の振幅が森の静寂を揺らす。


「敵は十二万――うち二万が街側に突入する。守るのは二百五十人だけ。

数で勝てないなら、通路を一つに絞って全軍を分断すればいい」


その後、レナの報告が届く。羊皮紙には《ワイバーン編隊・北東空域》と墨跡が滲んでいた。

飛行部隊に対する対抗策も考案していく。


森が深呼吸を返し、朝露がきらめきはじめた。

しかし――丘に残る巨大な影だけは、森そのものが息を詰めたように存在感を放っていた。


やがて、遠くから魔道拡声器の残響が森林を切り裂くように響いた。

冒険者ギルド作戦室では、各ランク代表の緊張した視線がスピーカーへと注がれる。


リアーネ(魔道拡声器越し)

「街の防衛には、正面の門――南門以外、すべてを封鎖します。

 北の段差、東の窪地、西の倉庫群――すべて、私が瓦礫の壁に変え、通行不能にします。


 敵の総数は十二万。うち十万が砦側、二万が街側に突入。

 守るのは、ギルドの冒険者たった二百五十人。


 数で勝てないなら、通れる道をひとつに絞り、全力を投入させる。

 敵が通れるのは南門だけ。だがあの門は守りには小さすぎる。

 だから門の先に“戦場”を作る。


 街の構造を読み替え、道を狭め、敵を誘導、全軍を分断する。

 

 私は街を壊す。だが、その破壊は守るための希望。

 信じてほしい。この力で、私は街を守る」


――冒険者ギルド作戦室――


魔道拡声器からリアーネの声が途切れると、室内が静まり返った。だが、その沈黙はすぐに破られる。


「待ってくれ! 町をそんなに壊したら、民衆の反発が怖い!」

Cランク代表のシュリアが声を荒げる。砦の外壁マップを指差しながら震える声で訴えた。


「でも、このまま待っていても全滅は免れないはずです!」

Aランク代表のミストラが机を叩く。切羽詰まった表情で、強く頷きを促す。


辺境伯の「では、賛成の者は?」という問いかけに、一瞬の間を置いて大半の手が上がる。

「反対は?」と続けると、シュリアひとりがゆっくり手を下ろした。


「この案を正式採用し、明日より決行とする。該当区画の住民には速やかに退去を――」

辺境伯の一声で議論は決着し、ギルド内には決意と緊張が同時に満ちた。


その後、リアーネは一人、窓越しに城門の南門を見据え、静かに作戦を反芻した。---

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