表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
2章 迫る大軍、迎え撃つ
34/95

27 夜影の余韻

静寂が戻った。つい先ほどまで森を揺らしていた突風も振動も、今は嘘のように息を潜めている――ただ、空気の密度だけが異様に濃い。


リアーネは丘の頂に立っていた。


身長十二メートル。肩幅は三メートル、腕は一本六メートル。重さ二十六トン――それらの数値はもはや“尺”より“地形”の単位に近い。


しかし彼女が一歩も動かないかぎり、森も空も石すらも震えを忘れたかのよう。自然は沈黙で敬意を払い、夜鳥は遠くで軌道を変えていた。


1 静かな対話


アグランは膝についた土を払いながら立ち上がり、深く息を吐いた。額を流れる汗はすでに冷え、瞳には驚きと同量の納得が宿る。


アグラン「……街の連中が見たら腰を抜かす。だが俺は――見られて良かった。ちょっと泣きそうだぞ」


冗談めかす声に、レナがかすかな笑いを漏らしたが首を擦る。高すぎる視線に首筋が悲鳴を上げているらしい。


レナ(心中)『怖い……けれど、それ以上に綺麗だ』


息が浅くなり、足首がまだ震えている。それでも視線を切る気にはなれなかった。


レナ「高すぎて……でも、本当に綺麗、ですね」


リアーネは目を瞬かせ、肩をわずかにすくめた。その僅かな動きでさえ上空の雲が渦を巻き、星明りが揺れる。


リアーネ「…この高さじゃ、見下ろすしかない。悪いけど」


声は柔らかいが、重低音が胸郭を震わせる。レナは身じろぎもせずに続けた。


レナ「少しだけ怖かった――でも、それ以上にあなたの優しさが伝わりました」


リアーネの肩から力が抜け、胸の奥で固く結ばれていたものがゆるむ。


リアーネ「……ありがとう。そう言ってもらえるのは、初めてかもしれない」


2 夜を護る決意


アグランが腕を組む。


アグラン「さて――今夜はここで休むつもりか?」


リアーネ「ええ。街へ戻ると騒ぎが再燃するわ。それに明朝、守りをどう強化するか自分の目で確かめたいの」


アグラン「壊す場所を選ぶ、ってわけだな」


リアーネ「無闇には壊さない。でも敵の大軍を想定するなら、私が踏み込む余白を作る必要がある」


アグランは納得の息をつき、笑みを浮かべた。


アグラン「任せるさ。修復費は……まあ、あとで泣きつくかもしれんがな」


レナ「ふふっ……」


三人の間に短い笑いが生まれ、そして夜風が再び静まった。


3 去りゆく足音


アグランとレナが森の小道へ姿を消すまで、リアーネは高く掲げた手でそっと見送った。その手ひと振りで木々がざわめき、星屑が揺らいだ。


静けさが戻る――否、静けさを支配する巨大な影だけが丘に残る。


4 一人の夜


リアーネは夜空を仰いだ。月が肩口のすぐ上にあり、まるで小さな灯籠のよう。「明日も守れる」と囁く声はない。ただ凍てつく大気がぴんと張り詰めている。


リアーネ(独白)「……せめて、彼らの眠る街に夜風が優しく吹くように」


その願いは吐息とともに白く膨らみ、森を包む闇へ溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ