表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
2章 迫る大軍、迎え撃つ
32/95

25 巨躯、再び空を覆う

 ――黄昏。辺境伯アグランが率いる斥候隊の焚き火を囲むのは三つの影だけだった。

 ぐるりと取り巻く森は赤紫に染まり、遠くに街の石塀が霞んでいる。


 高さ一〇メートル近い黄金の輪郭――巨きな女戦士リアーネ。


 漆黒の外套を肩にかけた屈強な男――辺境伯アグラン。


 炎越しにメモ板を抱く――ギルド受付嬢レナ。


 地表には虫の羽音ひとつ無い。風さえも、この場所を避けていた。


1 四つの条件


 アグランが半歩踏み出した瞬間、リアーネが右手をゆっくり掲げた。空を切るその動きだけで、焚き火の炎がゆらつく。


 リアーネ「……条件があるの」


 細いが芯を孕む声。アグランの脚が止まる。レナは思わず息をのんだ。


 リアーネは遠くの街の輪郭を一瞥し、人差し指を立てる。


 街の再設計を私に任せてほしい。「城壁は低すぎる。市街戦になれば被害は拡散する。だったら最初から“盾”として組み替えた方が早い」


 角ばった家並みを

 眼下に見やり、彼女は淡々と言った。


 リアーネ「残念だけど、侵入は防げないわ。だから私が、壊す。嫌われるだろうけど――もう、慣れてるもの」


 二本目の指が伸びる。


 緊急連絡用の魔導具を二対。光と音で十分。「カイが危険に晒された時、私は砦を放棄してでも駆けつける。これは譲れない」


 三本目。


 行動の自由。「“主”を討つ時は私が決める。その混乱が、結果的に防衛線を軽くするはずよ」


 そして四本目。


 地形が変わっても文句は言わないこと。


 数秒の沈黙。アグランは顎髭を撫で、盛大に笑った。


 アグラン「いいぜ全部! 面白ぇ女だ、お前は!」


2 巨身、起立


 夕陽が森の梢を紅く縁取る。リアーネは膝に手を当て、静かに立ち上がった。


 ――ごぉん。


 その動作だけで、大地が低くうなった。草が揺れ、地面の小石が跳ねた。


 重さはおよそ十トン。身長はすでに九メートルに達している。けれど、その圧力は数字では語りきれなかった。


 彼女の頭が空に近づくたび、空気の流れすら変わるように感じられる。


 受付嬢が思わず一歩、いや二歩下がる。


 辺境伯は腕を組んだまま、真顔でつぶやいた。


 アグラン「……立っただけ、だよな?」


 リアーネはすでに空の一部だった。肩幅は木々の枝を超え、両脚は一抱えでは足りない丸太のよう。腰から上は森の上に浮かび、光を遮って木陰すら濃くしていた。


 立ち上がった彼女の存在は、まるで「山が動いた」ような威容だった。


 そのまま、彼女は胸に手を当て、軽く息を吸う。


 リアーネ「じゃあ……行こっか」


 彼女の足が、一歩、地を踏みしめる。


 ――ごおおぉぉん……


 空気が震え、地面が軋む。これが、辺境を護る巨躯。いま、再び歩き出す。


 リアーネは森を見渡しながら、ふっと目を閉じた。


 ――脈が早くなる。体の中心に、熱が集まっていく。


 皮膚の内側から、力が脈打つように膨れ上がっていく感覚。


 そして、彼女は小さく口元をほころばせて言った。


 リアーネ「……始まった」


 受付嬢が思わず「えっ……?」と声を漏らした、その瞬間。


 リアーネの身体が、ごくわずかに“伸び”始める。


 背筋をすっと伸ばしただけでも、耳をつんざくような微かな音が空気を裂く。膝から太ももにかけて、ぎゅう、と筋肉の密度が増していく。肩がわずかに広がる。指先が伸びる。金色の髪がさらりと揺れる。


 受付嬢はすぐに悟った。これは……また“くる”と。


 レナ「閣、閣下っ……!?」


 彼女は咄嗟に叫んで、辺境伯のマントにしがみついた。


 アグラン「お、おい落ち着けって、俺は動かねぇぞ……」


 だがそのとき、リアーネは満面の笑みを浮かべ、楽しげにこう言った。


 リアーネ「良かったね、閣下。……やっと、私の“こと”、知れるわよ」


 それは警告ではなかった。むしろ、歓迎に近い声だった。


 ――ごぉん!


 それは、一歩ではない。リアーネがただ大きくなっただけなのに、地面全体が――ズシーン!と揺れた。


 受付嬢が「ひゃっ……」と短く声を上げる。リアーネの体は確かに膨張していた。


 そして、次の瞬間――ぶわっ!!


 リアーネの全身から、四方八方へ突風が吹き抜けた。


 草が倒れ、焚き火が消し飛び、受付嬢の髪がぐしゃぐしゃに持ち上がる。


 辺境伯すら、ぐっ、と足を踏ん張っていなければ吹き飛ばされそうになる。


 成長中


 身長 930cm。


「ふふ……風、出ちゃった。ごめんね」


 ――ズシィィィィィィン!!!!


 身長 960cm。


 「閣下、しゃがんじゃった……大丈夫? これでも、まだ序の口よ?」


 アグラン「っ……やべえ……やっぱ、規格外すぎんだろ……!」


 ――ズドォォォォンッッ!!!!


 木々が弾け飛び、幹が途中から折れ、吹き飛ぶ。


 身長 990cm。


 リアーネ「……閣下。そろそろ、知ってもらえた?」


 ――ズドォォォオオォン!!!!!!!!


 地面そのものが浮き上がる。土が跳ね上がる。


 身長 1020cm。


 リアーネ「……うん。ここまでくると、風が収まらないのよね」


 ――ゴォオオオオオオォォォ!!!!!!


 突風の中心にいる。


 身長 1050cm。


 アグラン「ぐぉっ……!? く、くそっ……これが……本気の“風圧”かよ……!!」


 その中で、リアーネは微笑んでいた。


 リアーネ「ごめんね……この高さ、初めてなの。ちょっとコントロール、効かないみたい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ