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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
1章 冒険のはじまり
26/95

21 出発前の空

 朝の光が街の石畳を照らし始める頃、ギルドの前にはすでに大きな影が落ちていた。

 ギルドの建物を背に、巨大な影を落とす女戦士――リアーネ。

 膝を立てて座っているだけで、街の門を越える視線を持ち、その背には静かな威圧感が漂っていた。


 その姿は今日も人々を圧倒し、遠巻きにされていたが――

 彼女は、静かで穏やかな微笑を浮かべている。


 「今日は、カイに任せるわ」


 ギルドとのやり取りは、すべてカイに託すと決めている。

 リアーネはただ外に座り、大きな背を街の壁にそっと預けながら、カイの報告を静かに待っていた。


 一方、ギルドの中。

 カイは手元の報告書を受付に差し出した。


 「これ、昨日の依頼の報告です。討伐数と、確認した巣穴の位置、あと回収物……」


 (姉ちゃんから“任される”って、こういう感じなんだな……)

 少し緊張しつつも、カイは背筋を伸ばして言葉を続ける。

 正直まだ慣れないが、それでも「自分がやらねば」という覚悟があった。


 受付嬢レナは報告書を受け取りながら、ふと外を窓越しに見る。

 窓からはリアーネの膝――まるで壁のような脚だけが見え、その巨大さを思い出させる。


 「……ご苦労さまです。リアーネさん、外で待っておられるんですね」


 「ええ……中に入ると、たぶんまた成長しちゃうかもって、いろいろ壊しちゃうと困るから」


 受付嬢レナが苦笑まじりに肩をすくめる。

 「正直、最初は怖かったけど……最近は、あの方の微笑みに慣れてきた気がします。

  昨日なんか、遠くから見えただけで子どもが泣き止んでましたよ」


 カイはその話に、少し顔をほころばせた。

 「……そうなんだ。それ、本人に言ったら喜ぶと思いますよ」


 「さて、新しい依頼の件なんですが――」


 レナは資料を取り出し、話のトーンを引き締めた。

 「辺境全域で確認されているゴブリン軍、2,000体規模で偵察活動中。

  その一部隊、約300体がこの地域に潜んでいるのを確認しました」


 「……300……」


 「指揮官はゴブリンジェネラル。部隊にはオークやゴブリンシャーマンも混ざっているようです。

  目的は不明ですが、街を避けて山林地帯に陣取っており、危険な気配がします」


 カイは神妙に頷いた。

 「やっぱり、調査して、場合によっては戦闘も……ですよね」


 「その可能性が高いです。そこで今回は――」


 彼女は奥の扉に視線をやり、声をかける。

 「入ってください」


 扉が開くと、4人の冒険者が姿を見せた。

 一人は剣士の青年で、温和そうな面立ちに鍛えた腕が目立つ。

 もう一人は弓兵らしく、背に長弓を負い、落ち着いた瞳の女性。

 軽装の探索者と、ローブ姿の癒し手も並んでいる。


 「俺はゾルド。盾役の剣士だ」

 笑みを浮かべた剣士がカイに手を差し出す。

 「こっちは弓兵のリュカ、軽戦士のマリナ、癒し手のフェイ。――しばらく一緒にやることになった。よろしくな」


 「……よ、よろしくお願いします……!」


 リアーネが昔“信頼できる”と言っていた4人組だ、相当な実力と人柄だろう。

 そう思いながらカイは少し緊張しつつ、彼らと握手を交わした。

 どの顔にも穏やかな自信が宿り、決して驕らない雰囲気がある。


 ギルドを出ると、朝の光が再び彼らを迎えてくれる。

 外に座っていたリアーネが、9メートルの身体をゆっくりと起こした。

 それだけで空気が揺れ、ギルドの扉がわずかにきしむ音を立てる。


 「カイ、終わった?」

 リアーネのまなざしが、5人を包み込むように降り注ぐ。


 「うん。任務の概要はしっかり聞いたよ。姉ちゃんが頼れるって言ってた4人とも合流した」


 リアーネは頷き、優しい笑みを浮かべながら立ち上がる。

 その姿は、ギルドの二階屋根をも見下ろす高さ。

 4人のD級冒険者は一瞬息を呑むが、すぐに敬意と安心の混じった表情に変わった。


 「……じゃあ、行きましょう。私が半分、引き受けるから」

 「前に危険を顧みず、村を救おうとしたあなたたちのことは信頼してるわ。安心して任せられる」


 9メートルの女戦士と、5人の仲間たち。

 ゴブリンジェネラル率いる300の部隊を相手取るこの任務に向け、彼らは静かに歩み始める。


 朝の光が石畳に長く伸びる影をつくり出す。

 その中には、大きさの違う6つの足跡が揃って並んでいた。

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