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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
1章 冒険のはじまり
25/95

閑話:おくりものとおいかけっこ (挿絵あり)

 その日、風は穏やかで、雲は高く流れ、空はどこまでも透き通っていた。

 丘の上には、静かで優しい時間が流れていた。


 カイがいつものように草原の道を登っていくと、先に着いていたリアーネが、巨大な両膝を立てて座りながら、優しい笑みでこちらを見下ろしていた。


 「カイ、来てくれてよかった。……今日はね、プレゼントがあるの」


 リアーネは、空間収納からふわりと小さな布包みを取り出した。

 彼女の手のひらの上では豆粒のように見えるその包みを、丁寧に、カイの前まで降ろしてくる。


 「まず、これ。新しい武器よ。私の“爪”で作ったの。

  鉄でも斬れるくらい強いわ。これなら、安心して使えるでしょう?」


 包みの中から現れたのは、黒く光る短剣のような武器だった。

 手に取った瞬間、カイはぴんときた。

 ――これは、姉の一部だ。


 「……すげぇ。軽いのに、強そう。これ、いつ使ってもいい?」


 「ええ。あなたの好きなタイミングで」


 リアーネは少し間を置いて、もうひとつの包みを取り出した。

 そして、静かに言う。


 「そしてこれ。私の“髪”で編んだ……下着と靴下よ」


 「……は?」


 リアーネは変わらぬ笑みで、少しだけ首を傾げる。

 「防具よ。どんな攻撃でも通さない。けれど――“私と別々になる時だけ使って”。

  それ以外の時は、あなたには必要ないものだから」


 カイの顔がひきつる。


 「避けるの、俺サボると思ってるでしょ」


 リアーネの金髪が、陽の光を受けて柔らかく揺れた。

 「ふふ、図星ね」


 その後、リアーネがすっと立ち上がる。草原がざわめき、影が伸びる。

 ゆっくりとした一歩でさえ、彼女の脚はカイの何倍もの距離を踏み越える。


 「じゃあ特訓よ。歩幅は六倍、私は“ゆっくり”歩くから。あなたは……逃げるの」


 「え?」


 リアーネが指さす先には、一本の大きな木が立っていた。

 その枝のひとつは、地面からちょうど六メートルの高さにある。


 「逃げられなかったら、あの木の上に置き去り。十分間ね。飛び降りたらダメよ?」


 「マジかよっ!」


 カイは草原を全力で駆け出す。

 その背後で、リアーネが静かに一歩、また一歩と歩き出す。

 ――だが、その一歩が、カイの六歩分。


 「ちょっ、ちょっ、待って! はやっ……いや、“ゆっくり”か!?」


 「ゆっくりよ? ふつうに歩いてるもの」


 リアーネの足音は、草原に低く響く地鳴りのようだった。

 巨大な足が草を押し潰し、小さな木々をかき分けながら迫ってくる。

 そのたびに、風が鳴り、空気がぐっと重くなる。


 「やばいやばい、これ絶対つかまるやつ!」


 そして――


 ふわっ


 幅1メートルの手のひらが、軽々とカイを掴み上げた。

 あっという間だった。


 「はい、終了。罰ゲーム」


 「えっちょ、もう! 姉ちゃんマジでやるの!?」


 次の瞬間、リアーネは腰をかがめることなく、その枝の上へとカイを“ぽん”と置いた。


 「わぁぁああ……!高っ……! ……こわ……(少し良い眺めかも)」


 枝に手を添えたリアーネは、にこりと微笑んで言う。

 「十分ね。ちゃんと反省してて?」

 とカイを置いて立ち去った。

挿絵(By みてみん)



 カイは身を縮め、枝の上で座り込む。


 十分後――

 再びリアーネの指が枝に届く。彼女はカイをつまむようにしてそっと持ち上げると、自分の顔の前まで運んだ。


 「どう? 次はちゃんと避ける?」


 「……はい。ちゃんと避けます……」


 罰は済んだ。リアーネはゆっくりとカイを地面に下ろすと、ふたりは草の上に並んで座った。

 日が傾き、空がやわらかく染まり始めていた。


 カイは手にした黒い武器を見つめる。

 それは、リアーネの“爪”でできたもの。姉の力の象徴だった。


 「姉ちゃんの髪と爪、強すぎじゃない?」


 「私、強いからね。あなたがそれにふさわしくなるまで、ちゃんと頑張らせるつもりよ?」


 「……ハードモード確定じゃん……」


 カイは苦笑いを浮かべた。

 けれど、どこかくすぐったくて。

 そしてとても、安心できる夕暮れだった。

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