表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
1章 冒険のはじまり
13/95

閑話:鍛錬の日

 風の穏やかな午後、街から少し離れた草地の広場に、どこか楽しげな声が響いていた。


 「いくわよ、カイ。次は警告なしで踏み込むわ」


 その言葉に、カイは反射的に跳ね起きた。


 「ちょ、ちょっと待て! 心の準備が!」


 リアーネの巨大な右足が、ぐう、と持ち上がる。7メートルの彼女の脚、それだけで建物一つ分の迫力だ。影だけでカイの全身を余裕で覆い尽くす。


 だがこれは訓練。リアーネが提案した、“踏み潰しを避ける”実戦形式の回避練習だった。


 「……来るよ」


 ブーツが、唸るような風をまとって振り下ろされる。


 カイは跳ねるように転がる。直後に**ズドォン!**と地響きが広がり、草が吹き飛んだ。


 「ギリギリね。影から逃げ切る判断が良かったわ」


 リアーネはゆっくりと足を引き、わずかに笑う。


 カイは地面に手をつき、呼吸を整えながら叫んだ。


 「スピード早すぎ! 風で目が開けられねぇよ!」

 「まだ本気の半分。草原だから優しくしてるつもりだけど?」


 そんな会話を挟みながら、カイは何度も跳び、転がり、反応を磨いていった。


 そして迎えた最終回。


 「……はい、これは――真上よ」


 一瞬にして、世界が暗くなった。頭上の光が奪われる。影がすべてを覆い、風が体を押しつける。


 カイは、迷わなかった。


 回転――地面に体を預け、重力を使って前転する。


 ズゥゥン!


 そのすぐ後ろ、巨大なブーツが地面を揺らし、草が大きく波打った。


 「……よし、成功!」


 リアーネは、微笑んだ。


 「合格、ね」


 休憩中。ふたりは並んで腰を下ろし、水筒を分け合っていた。


 リアーネは、座っていてもカイの目線より高い位置にいる。


 「なあ、そういえばさ。腕相撲って、やったことないよな」


 カイが言った。


 リアーネは目を瞬かせる。


 「この体格差で?」

 「俺の全力と、姉ちゃんの“小指一本”で勝負だ」


 リアーネは笑った。


 「ふふ……面白いわ。いいわよ」


 カイは構える。リアーネは膝を立てて座り、小指一本を差し出す。


 「いくぞ……!」

 「始めて」


 カイの全力の押しに、リアーネの小指はびくともしなかった。


 「……うぅぅぅ……!」

 「ごめんね、力、入れてないの」


 10秒後、カイの腕はぺたりと地面に倒れた。


 「……完敗……!」


 リアーネは彼の頭を軽くぽんぽんと撫でた。


 「じゃあ、次は“両腕で本気”で挑めるように、鍛えておきなさい」


 夕暮れの風が、ふたりの間をやさしく吹き抜ける。


 「俺、いつか勝てるかな……?」

 「本気の私に? ……十年後かしら」

 「おい、笑うなよ!」

 「ごめんごめん。でも、その時が来たら、ちゃんと“全力で”勝負してあげる」


 その日、リアーネは成長しなかった。

 けれど――絆だけは、確かに強くなっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ