日常の終わり
私の名前は亜紗。18歳。
趣味は小説を書くことと、妄想すること。アニメ鑑賞と乙女ゲームが日課のいわゆる腐女子だ。
いまはオリジナルキャラクターをつくって、好きなアニメの二次創作小説を書くことにはまっている。
今朝も小説の投稿をすべく、スマホに指を滑らせていた。
『おはよん』
そう挨拶してきたのは、小学校からの幼馴染の千代。
「おはー。今日は電車通学ー?」
『んー、今日は送っていけないって言われたー』
千代は私の趣味を包み隠さず共有できる、唯一の友だちだ。
いつもは学校まで車で送って行ってもらっているけど、今日は都合が悪かったらしい。
『なにしてるん?』
「新作の投稿。…電車の中で話す内容じゃないからね」
『おぉー、今回はどんな話なの?』
「え。いま私の話聞いてた?」
千代は絵を描くのが得意で、私の書いた小説によく絵を描いてもらっている。
小説内容の共有はしょっちゅうしているものの、私が書いている小説は、通学の満員電車のなかで語れるような内容ではない。
『それにしても今日は人多いね~。こんなに人多かったら気持ち悪くなりそ』
「いや、朝の電車なんてこんなもんでしょ。この車通学っ子め」
いつも通りの、なんてことない日。
【次は~、〇〇駅。降り口は左側です】
そんなアナウンスが聞こえた。
「ほら、次でこの車両の学生半分くらい降りるから…」
しかめっ面をしている千代に声をかけた。
次の瞬間、電車が大きな音を立てて揺れた。
車内に悲鳴が響き渡る。
「なに?!」
『どうなって…!!』
先頭車両に乗っていた私たちは、目の前の光景に目を見開いた。
目の前に迫ってくる対向車両。避けようがない。
次の瞬間、大きな音とともに私の意識は飛んだのだった――…