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1000年以上生きた大魔導師 悪役令嬢みたいな小娘に狙われてしまった件

作者: コカマキリ

新作です! お久しぶりの投稿で緊張してます!

晴れた朝日に目を貫かれ、おれはしぶしぶ出勤した。


全く…。異世界だというのに宮仕えは辛いものである。おれも普段ならもう少し家で魔導の研究をし、資料を帝国図書館から取り寄せのんびりしているもんだが…。


今日は5年に一回の帝国の総国祭。まあ言うてみれば帝国民は休日件お祭り。おれたち宮仕え組はお仕事という理不尽の暴力。


だがおれは1000年生きた大魔導師。自他ともに認める最強かつ至高の存在。


そんな些細なことで気が揺れ動いたりしない。今日は日差しが強いなあ。太陽半分ほど削りとってやろうか?


戦争の時代では英雄ともてはやされ、平和になれば恒久を保つ神聖な存在と奉られてきた。


もちろんこの帝国でのおれの待遇もかなり良かった。だが金に不自由してるわけではないので報酬は受け取っていない。


そのかわりこの国における貴重な魔導書や魔術研究施設を利用させてもらっていた。


なぜおれが時間ギリギリだというのにここまで余裕でいられるかだが…。


もちろん転移魔法でちょちょいのちょいだからだ。うむ。我こそは大魔導師なるぞ!?


余裕である。そしてその余裕はこれからも続くはずだった。


いつも通りの見慣れた光景。この世界はいつまで中世ヨーロッパの世界感が続くのだろうか。


転移した先は【銀欲の間】


そしてこの扉の向こう側は王の謁見室。そこにはこの帝国中の大貴族たち並び王族たちが集まっている。


「陛下…。ご挨拶を遅れたことをお許し下さい。」


「良い。遠路ご苦労である。」


陛下だっておれが遅れて来ることを望んでいるし、おれが転移で来ていることさえもあたり前だが把握している。


なぜこんな社交辞令が行われているかは語るまでもないが…。おれは客将だ。


あまり内部のことに首を突っ込むべきではないし、向こうにもいつ敵国に世話になるかわからないおれに国家機密を漏らすわけにはいかない。


そういう関係だ。悲しきかな。孤高の漢の宿命ってやつである。


おれは長くときを生きているせいかあまり他人に興味がない。


「おや!? 会議の真っ最中だったのでは!? フィーリーズ伯爵!? あ、新しく新調しましたね?」


「さっすが! 分かりますか!? 愛娘からの新しいプレゼントなのですよ〜!」


と、自慢気にネクタイをしめなおす。


「ねえねえ、聞いてくださいよ〜!魔導師様!」


「あ、私も!」


「ずるい〜!」


貴族女性(既婚者)からの絡まれ度もなかなかである。それでも…おれは孤高だ。間違いない。


だが旦那(男性貴族)からの嫉妬は一切ないというこの現状。おれはこれを裏会議の底とよんでいる。ようは惚気話とか愚痴とかなんでも言いたい放題の時間である。


あ…誰かタスケテ。おいお前たち。おれを見捨てないで。


なぜか男性陣からは視線を外される。おれを見捨てるなよ。覚えてろよ。お前ら。おれを良いように使いやがって(涙)


こちとら100N え〜なんでしょう。それは大変ですねぇ。ええ。まさかそんなことが!? わあ! 凄い!


なぜか知らないがおれは話にしだいに乗せられてしまう。


なんという屈辱。


王の前でなんたる仕打ちってみんなも思うだろう? おれも思うよ。しかしな…。肝心の王はこの間席外して休憩してるの。


「王のおな〜り〜」 


あっ。王さん来ましたな。 


おれはなんとか人混みから脱出し、席につくことができなかった。


というのは王と一緒にちびっ子貴族たちが次々に入場してきており、そのうちのちびっ子Aがおれの席の前にどや顔をして立たずんでいたからである。


ちびっ子Aはおれに挨拶をしてくれるのかちょこんとカテーシー(?)らしきものをし口を開いた。


「お兄たんを、私のお婿にしてあげます」

「あ、間に合ってます」


「ビエエーーーーーーーン」


突然の告白玉砕による大号泣。誰が予想できただろうか。


幼女を泣かしてしまった。これはどうしたものか。これおれが悪いのか? やっぱそう?


「き、貴様!!! 私の愛娘の告白を断るとはおのれ許さん!」


おっさんがおれの胸ぐらを掴み揺さぶってくる。


公爵様がご乱心なされた! 王の御前なるぞ!

控えろ!


これが彼女との出会いだった。おれがロリコンでなくて良かったな。幼女。


悪いがその日その後の記憶がおれにはない。


ちびっ子Aは大人気な女の子だったようで、奥さんにひっぺがされた公爵の体重の反動でひっくり返ったおれに子供たちが突撃してきたのだ。


そのいくつかの小僧の頭がそのう…急所にぶつかってな!?


あとは言わせないでくれ恥ずかしい。


目を覚ませばおれは公爵様のお嬢様の部屋にいた。あのときとっさに魔法で防御をするだけならいくら動揺していたおれでもやれた。


だが…。あんなちっぽけな子供たちへの魔導波の影響は図りしれない。


ふむ。やはりおれは孤高のおと…こ。


いや。待てさっき場所特定魔法使って出たのなんだっけか? 【もういっかい!】


ふむ。何度調べても…。公爵様のお嬢様のお部屋と書いてある。


いやなんで!?


どう考えても狼藉働かれたのおれだし!? おれ一応貴族の位あの国でもらってるくらいには丁重な扱い受けてたし!?


なんで家に連れ帰って寝かしてくれないの?


「魔導師様ったらほんとにお寝坊さんなんだから〜。あと10年眠ってたら流石の私も激おこです〜。」


おい。まさか。あの頭ゆるそうなのがお嬢様だとでも言うのか?


不眠魔法使ってた弊害は気絶したときのリスクにあり。おれは人生の勉強をした。


「まあそうなっても、魔導師様は私と結婚してくれると思いますけど〜。」


きゅるんって顔しておれを見るな!


可愛いくなったなお嬢様…。頭が緩くなければ危ないところだったぜ。


「・・・。」

「・・・。」


無言で見つめあう2人。そこにまだ愛はなく。いや片方にはあるなこれ。


おれは学ぶ漢。ここらでお前の狂犬お父様が来るのだろう。


ササッと身構え体術の体制をとる。なぜ魔法使わないかって? 


魔法使ったら部屋壊してしまうからな。壊したものを直せば良いと思うかもしれんが、直せても壊されるそのことが嫌なものだってあるからな。 


それにおれは体術も1流…。


おい? 小娘。そのチェックリストはなんだ? 


「うーん。これは違うか。」 ピピッとなにやら印がつけられている。


「???」


シャーっとカーテンが降ろされた。


次…。


「デットエンド様。私をお救い下さりありがとうございます…これからは私の身も心もささげますわ。私を一人にしないで…。」


どこの演技派なのこの子。ずっキューーーん。すっごい危なかった。心臓止まりかけた。(まあ蘇生できますけど!)


心臓の音がうるさっい! もうどくどくしか聞こえないってなあ。


この長い人生で何度か人生のクライマックス(ギンッ)みたいなシーンで亡国の姫さんたちを救ったその日には言われたもんだ。


だがその彼女たちの手をとったときには別の誰かと幸せになっている未来が見えた。


だからおれはキザなセリフを言い自分から身を引いたものさ。そして月日は残酷でおれは孤高の…。


「これは効果ありそうね。」


「なあ。そのメモの中身ってまさか。」


「これは、あなたの性癖ベスト100ですわよ。」


「・・・。」

「・・・。」


「聞いてもいいか? どこでそんなもの手に入れたんだ。よこしなさい。」


「いやよ。これは私の自作でしてよ。」


こいつもはやおれの心を読んだのか?


「そんなおれが小娘に心を読まれるなんて屈辱…。」


床にひざまずく羽目になったおれに小娘は宣戦布告をしてくる。


「私魔法の天才なの。あなたに愛されたくていろいろ研究させてもらったわ。」


「なんて無駄な時間を。」


「!!!」


「若いのに…。もっとやるべきこととか、できることがあっただろうに…。」


「!!!?」


「そんな。おれのせいってことか!? おれがあの日! 小娘の告白を断ってしまったから?」


「あっ違います。私が好きでやっていただけですから。」


「いや。ほんとに申し訳ないーーーー。」


「謝らないで? 私の時間にたいして勝手に謝らないで下さりませんこと⁉️」


それにほらっと胸をかざす。私はこんなにも乙女に!

と誇ってきた。


「小娘…いや。お嬢様。あんたいくつまで片思い拗らせているんですか?」


「今年で18ですわよ!」


ふふんとばかりにドヤ顔をしてくる。


「はあ…。待てよそれはおかしい。社交界デビューは5歳だから。おれは13年もこの部屋にいたってことですかい?」


「そうなのですわ。でも学園生活が忙しかったものですから。最近はあまりここへは来れず…。」


「・・・。ヤンデレ監禁説浮上。いや。これはあれかつまりは…。」


いや18? 貴族のご令嬢が18? しかも公爵令嬢。


これどうすんの? ほんとにどうするのこの子?


「後2年おれが目覚めるの遅かったらどうするつもりだったのですか?」


「2年くらいどうってことないですわ! 私は造作もなく待ち続けましたことでしょう!」 


「あーーーーーーー! これあかんやつ! 急いで新しい男探そうと思ったけどあかんやつ!」


キラキラした瞳がおれを貫く。眩しいよ。その純粋無垢さ。


公爵様あのときおれをころばしておいて本当に正解でしたね。おれとんでもない試練勝手にこの子に与えちゃっていたよ。


「床にそんな格好でいらしたらお身体に良くないですわよ。ほら私の手をお取りになって。」


「ああ。悪いな。」


そう言っておれは彼女の手を取った。


そのとき彼女の今後の人生が垣間見えた。まるで悪役令嬢のように処刑される未来。


友人たちとの確執。


「なあ。聞いていいか? なんでこんなに友情関係が薄いんだ。」


ギ、ギクリ。


「ま、まさか…。」


「あ、あなたが家に一人だと寂しくなるのではと思ったからですわ。なるべくお時間は使っておりましたの。」


すみません。気絶しててすみません! おれならそんな思いさせないのにとか勘違いしてましたすみません!


悪役令嬢の運命を辿っていた女の子の影はあの大魔導師だった。


さて…ここからおれ汚名返上できますかね?


こんなにおれを好いてくれた子が不幸になるならおれは運命を書き換えてみせよう。幾千もの魔術を駆使してなあ!


「私の妻になって頂けませんか?」

「はい…。」


彼女の天才的な演技をみた後だというのに、おれは彼女の涙が信じられた。


すごく幸せそうな顔をしていた。 


ただそれだけで、おれたちは間違っていないと信じられた。


************


それからはあっと言う間だった。彼女の両親に挨拶を交わし。


大魔導師の嫁になると虚言癖扱いされていた同級生たちを卒業パーティーで黙らし。


国王との縁談を跳ね除け続けてきた公爵家の信用を盛り返し、帝国を末永く支えた。


そしてそこにはいつも幸せそうな夫婦の姿があったと言う。











読んでくれてありがとうございます♪ 誤字報告まことにありがとうございます! 助かっております!



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