7話 錬金術
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四斎市で購入した、雷竜の体内から出てきた岩石を調べてみた。調べるといっても素材を前にして『未知なる記憶』を発動してみればいいだけである。
その結果、とあるページが眩く光り輝き、自動的にページがめくられていく。レティシアが開かれたページを見てみると、そこには雷光石と言う項目が新たに追加されていた。
「雷光石ねぇ……」
ページには関連の素材や完成品が記載されている。関連と言っても発想次第で組み合わせは無限大だ。それによれば、剣や指輪、雷を発動するアイテムなどを作成する事が可能なようだ。雷を出すアイテムとは雷遁のようなものだろう。と納得しつつ、またもや雷遁って何だ?と自分に問いかけてしまう。
初めて聞く単語のはずなのに、その内容を理解している現象はレティシアの出自と関係あるのかも知れない。実はレティシアは古代人と呼ばれる者の血を引いている。両親から聞かされた話によれば、古代人は人類繁栄の黎明期に突如として現れ、この世界を大いに発展させ、その体に宿した命力を使って様々な技術や術式を編み出したと言う。それのみならず、未知の知識を伝え、現在の社会制度の基礎を築いたとされている。まさに超人なのである。しかし現在、世界に古代人の国家などレティシアが知る限り存在していないし、古代人の知り合いなどもいない。それが理由なのかは知らないが、レティシアは両親から軽々に出自を明かすなと言われてきた。
レティシアは、気を取り直して、この雷光石の使い道を考えていた。どう使おうか悩みどころである。レティシアは一応、探究者でもあるので強力な武器を造るのもいいかも知れないと考えを巡らせる。
レティシアの冒険スタイルとしては、魔物が出たら物理で殴るのがスタンダードだ。よって現在のところは、力の杖で殴っていくスタイルを貫いている。
ちなみにレティシアはかつて存在したとされる魔帝の力を借りた魔術も使用できる。後は、世界の理の力を顕現させる理術、精霊神の力を借りて世界に存在する精霊に干渉する精霊術、そして古代人のみが扱えるとされている命術を行使できる。
取り敢えず、レティシアは雷光石を『未知なる記憶』に収納した。この能力には該当するページを開くと、アイテムや素材をしまったり取り出したりする事もできるので大変便利なのだ。ちなみに、何故かは知らないが、ドラゴンテイルの建物すら収納することもできるらしい。レティシアは、今は亡き母親からそう聞かされていた。
レティシアは、ドラゴンテイルの工房の大きなテーブルの前に立つとガラスに入った薬品や魔術書などを片付ける。今から薬を精製していくためだ。まずは、医者に卸している薬を作っていく事にする。大量に作る薬の素材や原材料は、定期的に契約商家から卸してもらっているので、十分な量が揃っている。
風邪薬や腹痛薬、頭痛薬などは庶民が直接買っていってくれるものだ。
製薬ギルドに加盟している薬屋よりも安価なため、良く売れる。
医者には麻酔薬に痛み止め、抗生物質などを売っている。こちらはきちんと素材や原材料の価格をふまえた値段をつけている。中でも抗生物質は、最近、錬金に成功したものであり、ニーベルンから南に行ったニーア沼に住むポイズンスライムの核が素材になる。
ニーア沼には毒を持つ魔物が多いため、探究者はあまり寄りつかない。そのため、素材の入手は難しく、今まで発見に至らなかったと言う訳だ。抗生物質エネトゲンは、ポイズンスライムの核、生命の水、弟切草、キネリッサの実があれば錬金可能である。おそらく世界的な大発見と言っても過言ではないとレティシアは自負している。
一般的に回復魔術があるので、薬は不要だと思われがちだが、回復魔術と言えどもそこまで万能ではない。病気に効く術は存在しないし、術式も未だ開発されていない。手術などを行うにあたっても薬は必要不可欠なのである。
レティシアは、薬の在庫を確認して残り少なくなっている種類の薬を作った。
錬金術と言っても、薬の容器まで勝手に創造されるなどと言った事はないので、できた薬を薬包紙や容器に入れていく必要がある。その作業をニャルに任せて、レティシアは医者に卸すための薬を錬金し始めた。
青色ポーションなどの液体の薬を創る時は工房にある特注の大鍋に素材を入れて錬金する。一般向けに売る青色ポーションなどは容器ごと売ってしまうのだが、医者に卸しているものに関しては容器は返却してもらっている。容器は容器で錬金術でも創り出せるのだが、資金の関係であまり創っていない。レティシアとしては、いずれは容器にも凝ってみたい気もしていた。
レティシアは、体力回復の効果がある青色ポーション、体力回復効果に加えて、傷の再生を加速させる紫色ポーション、魔力回復ポーションも創っておく事にした。ちなみに、傷を凄まじい速度で回復し、体の欠損すらも回復可能な赤色ポーションも創り出すことができる。素材が高価なのであまり創ることはないのだが。
『未知なる記憶』が忙しなく開いたり閉じたりしたかと思うと、眩く発光する。錬金術を行使する時は、このような挙動になるのだ。
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