48話 異空間への招待
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魔神バークレイを何とか滅ぼしてヨシュアたちを回復させた後、ニーベルンに戻ったレティシアたちであったが、ドラスティーナにヴァンパイアの心臓を無心するも断られ、目的を達することができず頭を悩ませていた。唯一の朗報は、レティシアが錬金したトーメル薬のお陰でミレーユの症状が劇的に改善したくらいのものだ。
それに朗報とまでは言えないが、気づきもあった。
バークレイとの戦いで覚えた違和感だ。魔神と悪魔との間には隔絶した魔力の差があったはずである。しかも魔力に対する耐性が高いはずの魔神を封じ込め、消滅させる力が悪魔の能力の残滓に過ぎない《黒の夢》にあったのは全くの想定外だ。あれはレティシアがダメ元で放った攻撃なのである。レティシアの胸中には世界に広く伝わっている常識が果たして正しいのかと言う疑念が染みのように広がってゆくのを感じていた。
この日、ミレーユはヴィスタインと一緒に、久々にドラゴンテイルに顔を出していた。その他には、店に完全に常駐するようになったヨシュアと、常連客と化したダタイがいる。
「やっぱりあなたは凄い錬金術士だわッ! 他の人が作った薬と比べると効果は段違いだもの」
ミレーユは無意味に体を激しく動かして健康をアピールしている。ヴィスタインはそんな彼女をカウンター席に座って心配そうに眺めている。
「ミレーユ……。いくら調子が良いからって安静にしてなきゃ駄目じゃない」
「もう心配性ねッ! ちょっとコーヒーを飲みに来るくらいいいじゃないッ!」
レティシアの心配などどこ吹く風でミレーユは元気な声を張り上げた。
容体が急変した時のことを考えると不安なのだが、彼女の様子を見るに調子は良いのだろう。
ヨシュアはダタイと異世界談義に花を咲かせている。よほど異世界のことが気に入ったらしく、ダタイを捕まえては色々と聞き出している。
あれからレティシアは、ニーベルンだけでなく近隣の街でも探究者ギルドを通して、ヴァンパイアの情報を集めている。レティシアは、探究者レイド・ウルガリィが出版した冒険記の中にかつて存在したとされるヴァンパイアの国の記述を見つけていた。ニーベルンから少しばかり距離はあるものの行く価値はあると考えていた。しかし、同時に人間と敵対していないヴァンパイアを一方的に滅ぼすことには躊躇いもある。
結局は、マクガフたちの鎧病研究に期待して、患者にはトーメル薬を服用させ続ける他ないのかも知れない。そう考えると、レティシアはふぅと溜め息をついた。
いつもと変わらない午後のひと時。開け放たれている窓からは心地の良い風が入ってくる。そんな中、レティシアは疲れからかウトウトとし始めていた。
その時――空間が撓んだ。
「何だ!?」
ヨシュアが立ち上がり周囲を窺う。
「これは……転移!?」
次に異変に気付いたのはミレーユであった。急激な神星力の高まりを察知したのだ。
彼らの言動に微睡から覚めたレティシアの膝の上の本が落ちる。そして立ち上がったレティシアを襲う違和感。確かに地面に足をつけているはずなのに、同時に浮遊感がある。
その奇妙な感覚に戸惑っている内に〝その刻〟はやってきた。
店の中は眩いばかりの光に包まれ、強烈な輝きに支配される。
――ホワイトアウト。
目を固くつむっていたレティシアが恐る恐る目を開く。
そこには最早、強烈な光はない。
光だけではない。
本当に何もないのだ。周囲を見回しても一面の白、白、白。
文字通り、真っ白な空間にレティシアたちは閉じ込められてしまったのであった。
恐らくドラゴンテイルに存在するセピア色の異空間と同じ様なものなのだろう。
「何だったんだ? 今のは……」
そう呟きながら立ち上がったのはヨシュアであった。それをきっかけに、皆が次々と目を覚ましていく。ミレーユにヴィスタイン、ダタイにニャルと言った面々が。レティシアはふと気が付いて辺りを見渡す。ファルの姿が見えない。
「何だか変な空間に飛ばされちゃったみたいね」
「どう言うことだ?」
「多分、何者かによって強制的に転移させられたんだと思うわ」
ミレーユは何となく事態を把握し始めたのか、口元に手をやって何やら考える素振りを見せている。どうやらドラゴンテイルを中心に転移の術式が発動したようだ。
立て続けに起こった魔神や悪魔の襲撃や、ノディオン、スキッドロアの言葉などから考えるに、レティシアたちをこの白い空間に招待したのは恐らく――亜神レッドベリル。
レティシアがその結論に達した時、空間に声が響いた。
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