32話 治療薬、錬金!
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ホテルシャトー・ニーベルン支店は、ニーベルン一の大通りであるベルン通りに悠然と佇んでいた。世界各地に支店を持っている世界規模の大企業である。
マクガフがフロントでヨシュアのことを話すと、すぐに彼の部屋へと案内された。マクガフとレティシアを先導するのは、ホテルの支配人の男性と第一発見者の女性従業員である。聞けば、部屋の掃除に来た従業員が皮膚を硬質化させて苦しむヨシュアを発見し、上司に報告して医者を呼んだと言うことであった。
ベッドには左腕を上にして横向きに寝かされているヨシュアがいた。彼は少し苦しそうな表情をしながらも静かな寝息を立てている。今のところ進行は止まっているようだが、首から背中にかけて鎧化の症状が見られた。
「どうするんだい? 君が作り出した薬と他の錬金術士や薬師が作り出した薬を比べると、君の薬の方が品質は良いように思えるが……。君のトーメル薬を試してみるかね?」
「マクガフ先生、人払いをお願いします」
「……分かった。私も外した方がいいかね?」
「いえ、居てもらって結構です」
その言葉に、マクガフ以外の二人は部屋から出て行った。
しばしの沈黙。しかしレティシアの決意は変わらなかった。
「『未知なる記憶』よッ!」
マクガフの前で錬金術を行使するのは二度目だ。
レティシアはいつもの通り、胸の前でパンッと両手で柏手を打つと集中を始めた。『未知なる記憶』のページが凄まじい速さでめくれては光輝き、それが繰り返されていく。素材の詳細が書かれているページが参照されて、収納されていた素材が次々とレティシアの目の前に現れたかと思うと、粒子のように分解されて混成されていく。
そしていよいよ、《ヴァンパイアの心臓》が出現した。
「これはッ!?」
たった今、抉り出したかのような鮮やかな紅色をする塊を見て、マクガフの顔色が変わる。その紅は一瞬で分解されると、今までの素材が混ざり合った球体へ吸い込まれるように消えていく。レティシアは、前回と同様にまずはガラスの容器を錬金する。無事、容器が完成すると、彼女はそれをそっと手に取った。その中にこんこんと湧きだす泉のように鮮血にも似た赤い液体が溜っていく。それと同時に、レティシアの目の前に浮かぶ素材の成れの果てもどんどんと小さくなって消えていった。
「これは……? トーメル薬ではない……!?」
レティシアが持つ試験管型のガラス容器に満たされた液体を見て、マクガフから困惑気味の声が上がった。
「そう……これは鎧病の治療薬です」
「な、なんだってッ!?」
部屋にマクガフの驚愕に満ちた声が響く中、レティシアはヨシュアを仰向けにして上半身を起こすと、紅の液体を少しずつ口に含ませる。それを全て飲ませると、ヨシュアの硬質化した部分がわずかながら変化しているのが見て取れた。瞬時に完治する類の薬ではないようだ。
「後は経過観察ですね。薬のレシピが正しければ完治……元の体に戻るはずです」
そうは言ったもののレティシアは自分の能力上、レシピに間違いはないと考えていた。
「レシピが判明したのかい!? まさかあの時に?」
「はい。でも入手はかなり難しいでしょう。なので量産は無理だと思います」
レティシアは一応、マクガフにレシピを教えた。そしてあらかじめ試験管に移し、理術で密閉しておいた《鎧毒》を手渡した。
「鎧病の毒です。ひょっとしたらワクチンが作れるかも知れません。解析をお願いします」
「任された。しかし毒か……もしかしたら体内のどこかに毒が溜っている可能性もあるな。それなら外科手術でも治せるかも知れない」
マクガフも何やら手応えを掴んだようで、表情は明るい。
「後は安静にさせよう。経過は私が毎朝、診に来るよ」
ヨシュアを横向きに寝かせ、外で待っていた支配人に事情を説明すると二人はホテルを後にしたのであった。マクガフは興奮気味に自分の診療所へ戻って行った。
一方のレティシアは今後の自分の身に降りかかるであろう災難を予想して頭を抱えた。人の口に戸は立てられぬもの。自分の能力を目撃した人間が少なからずいると言う事実が彼女の心に影を落とした。
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