間章 半端者
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「あー早く帰ってコーヒーが飲みたいわ」
ミレーユらしくない疲れを感じさせる一言にヴィスタインが心配そうな声を掛ける。
「どうした? ミレーユ」
ここは、ニーベルンから遠く離れた、ドライグ王国の王都ドラグリム。その王城の中にある大広間にて立食形式の晩餐会が催されていたのだ。
ミレーユが何故このような場所にいるかと言うと、端的に言えばニーベルンの領主、フェレール辺境伯に見つかったからと言うしかないだろう。特にニーベルンに限った話ではないが、ハイエルフのコミュニティは世界各地に存在している。今回は、フェレール辺境伯に仕えるハイエルフの一人が、偶然、ミレーユがニーベルンに訪れていることを知り、それを報告したのである。そしてこの話が国王の知るところとなったのだ。
そんな訳でミレーユとヴィスタインは滅多に見ることのできない転移装置によって、ニーベルンから王都ドラグリムへと転送されたのであった。
王族主催の晩餐会と言うことで、当然ミレーユもヴィスタインもいつもの格好ではない。
「こんなヒラヒラしたドレスなんて性に合わないわよ」
「俺もだ」
二人は、ドライグ国王へさっさと挨拶を済ませると、バルコニーで夜風に当たりながら、普段は口にしないワインを飲んでいた。
そこへ二人の男性が挨拶のためにミレーユの下へとやってきた。
「ミレーユ殿、此度は突然の誘いにもかかわらずご足労頂き、感謝の言葉もありませぬ」
「いえ、本日はお招き頂き有り難く存じますわ」
ミレーユは取り敢えず、無難な言葉を返しておく。
「アルヴィス様は息災であられますかな?」
「はい。父は元気ですわ。まだまだ若いですし」
本当は、国を飛び出したミレーユはしばらく父親には会っていない。ミレーユは早くこの場から去って欲しいと思っていたが、そう思い通りにはならなかった。聞けば、この二人は第一王子と宰相であると言う。しばらく、アルヴィス率いるレイネ族を褒めそやす言葉が続き、それにミレーユがウンザリしてきた頃、また別の男性が二人、一人の女性を伴ってやってきた。
彼らは第二王子とその後見人だと言う。女性の方はハイエルフのようだ。
「これは……。レイネ族のミレーユ殿ですか。まさかこのような場所でお会いするとは」
ミレーユは、誰とも知れない人間に自分の名が知られていることに薄気味悪さを感じた。
「あら? 誰かと思えば、ミレーユ殿ではありませんか。このような場に半人前を寄こすなんてレイネ族は何を考えているのかしら?」
ミレーユの表情が厳しくなる。恐らくこのハイエルフの女性はリーン族の者なのだろう。同時にヴィスタインが動こうとするが、ミレーユが手で制した。
「はて? 半人前とはどのような意味なのだ?」
見え透いた態度でハイエルフの女性に問い掛けたのは第二王子であった。
「アバーニッ! それにクズミン殿も言葉が過ぎるぞ」
「ガルムンク兄上、私はただ疑問を口にしただけにございますぞ? ミレーユ殿に何か問題でも? どう言うことなのだ? ネフェリスよ」
無礼な弟に注意する第一王子ガルムンクであったが、思わぬ反撃を受けて黙り込む。そこへ第二王子アバーニの後見人ネフェリスが口を開いた。
「アバーニ様、このような重要な外交の場に、アルヴィス殿の庶子であり、しかもハイエルフハーフのミレーユ殿を送り込むなど我が国は軽んじらグヌヌヌ……」
ネフェリスの言葉も終わらぬ内に、ヴィスタインの右手がその首を絞り上げる。そしてそのまま右手一本で体を持ち上げると、憤怒の色に染まった顔で吠えた。
「貴様、死にたいらしいな。ハーフだからどうだと言うのだ」
ここでようやくミレーユは悟った。ここは派閥争いの場であり、レイネ族とリーン族の戦場でもあったのだ、と。
「なッ!? 貴様、このような場で狼藉を働くとはグムフウウウ……」
ヴィスタインが今度は左手でアバーニの首を握りしめて持ち上げた。
「黙れよ。このゴミカスが。コンポストにぶち込んで土に還してやろうか」
流石に敵対派閥である宰相もマズいと思ったのか、ヴィスタインを止めに入る。しかし、彼は止まらない。止まるはずがない。
「止めなさいよッ! 半端者は従者の躾すらできないのかしら? そこの無礼な狼藉者ッ! 乱暴な行為はやめなさいッ! と言うか見てないでアンタも止めなさいよッ!」
ハイエルフのクズミンがヴィスタインとミレーユに喰ってかかる。ミレーユに今にも掴みかからんばかりのクズミンをヴィスタインの前蹴りが襲う。それをまともに喰らって吹っ飛ばされた性悪ハイエルフに更なる攻撃が突き刺さった。
「仮にも一国の王女に何をほざく。ミレーユのどこが半端だと言うのだ。無礼者は貴様だ。このクズエルフが」
「ハハッ! ハハハハハッ!」
それを見てミレーユは思わず大笑いしてしまった。こんなことは駄目だと分かっているのにもかかわらず、ミレーユの笑みは止まらない。だってこんなにも痛快なことなんてない。
こうして晩餐会は大混乱に陥ってお開きとなってしまった。ミレーユたちはここまでの騒ぎを起こしたにもかかわらず、第一王子や宰相の取り成しもあって特に罪に問われることもなかった。
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