30話 グランデリアの正体
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襲撃があった後、レティシアはファルを連れてすぐにマクガフを呼びに行き、その足で辺境伯邸へと向かった。そしてかなり無理を言ってフェレール辺境伯に面会を頼んだ後、彼と顔を合わせると開口一番に言い放った。
「閣下、単刀直入に伺いますが、ご夫人は人間ですか?」
「何を言っとるんだ。君は」
レティシアが真剣な眼差しで間抜けな質問をするものだから、父親に着いて来ていたノディオンが「くっくっく」と声を上げて笑い出した。ドライグ王国内で〝フェレールの若獅子〟と呼ばれているらしいノディオンの可笑しくて可笑しくてしょうがないと言った様子にレティシアは少し面喰う。ただのすました男性ではないようだ。
「ち、父上……。フォルトゥーナ殿は真面目に質問しているのですよ? くくくッ……」
笑いを堪えようとしながら何とか言葉を紡ぐノディオン。
「そ、そうなのか?」
「えッあッはい。あたしは真面目に伺ったのですが……」
「人間に決まっているだろう。元は王国内の伯爵家のご令嬢だ」
「分かりました。ではエミリアさんの部屋へ急ぎましょう」
レティシアはそう言いきると、エミリアの部屋へ向かって早足で歩き出した。
「待て待て待て! 何故、ここでエミリアが出てくるのだ?」
「先程、ヴァンパイアに襲撃を受けまして」
その言葉に、一転して真顔になるフェレール辺境伯。
「ヴァンパイアだと? この街にヴァンパイアがいると言うのか?」
「はい。かなりのダメージを与えたとは思うのですが、完全に滅びたと言う確証が得られなかったので、このような急な訪問となった次第です」
流石にここまで言うとフェレール辺境伯も気が付いたようだ。
「まさか、エミリアがそのヴァンパイアだと?」
「はい。恐らくは。診察の時に術式が発動したとご説明したと思うのですが、帰って確認しましたところ、あれはヴァンパイアを感知したものだったのです」
「信じられぬ……」
「既に逃げられてしまったかも知れませんが、急ぎましょう」
「まぁ、それは問題ないと思うけどね」
黙って後に続いていたノディオンがポツリと呟きの声を漏らした。レティシアは、それがどう言う意味か分からずに真意を問い質そうと口を開きかけるが、ノディオンの一言がそれを許さなかった。
「着いたよ」
一同は、エミリアの部屋の前へとたどり着いていた。
フェレール辺境伯は律儀にもドアをノックして声をかけてから部屋へと足を踏み入れた。それに続く一同。そこには、茫然とした様子で立ちすくむエミリアの姿があった。
「どうしたのだッ! エミリアッ!」
その姿にどことなく異変を感じ取ったのか、フェレール辺境伯がエミリアに駆け寄ろうとした。しかし、彼が娘に近づくことはできなかった。ノディオンが止めたのだ。
レティシアが来たのが分かったのか、エミリアはバルコニーへと至るドアに駆け寄ると、ドアを開こうとしたり、ガラスの部分を破ろうと足掻き出した。しかし、彼女が何をしようが外へ出ることは叶わない。
「何故だ……何故、結界なんて……」
「あれは神星力の結界だねー」
ファルは結界の存在に気づいていたようだ。レティシアは誰が張ったのか何となく察するが、今はエミリアの正体を暴くことが先決だと判断する。
「ここまでよ。エミリア……いえ、グランデリアッ!」
どうしても部屋から出られないことを理解したのか、エミリアは振り返ると、縋る様にフェレール辺境伯に向かって早口でまくし立てる。
「お父様、そこの女が意味の分からないことを言っているようですが、わたくしはエミリアですわ。それにそもそもこのような時間に何の御用ですの?」
「いつまで茶番を続けるつもり? 往生際が悪いわよ?」
「何よ。わたくしに何をするつもりなのかしら? 貴族の娘に手を出してただで済むと思っているの?」
「早く認めてくれない? 回りくどいのは好きじゃないんだけど? そう言うのなら仕方がないわ。グランデリア、脱ぎなさい」
『は?』
フェレール辺境伯とマクガフ、そして当のエミリアまでもが間抜けな声を上げる。
「ああ……えーと言葉が足りなかったわ。あなた、さっきあたしを襲撃しに来たでしょ? その時、かなりのダメージを負ったと思うの。あなた今、傷の回復を図ってるところよね?」
「ッ!?」
エミリアから動揺の色が発せられる。そしてそれに追い打ちをかけるようにノディオンが言った。
「エミリア、いや今はグランデリアと言うのか。もう諦めた方がいい。私は見ていたよ。君が先程この部屋を抜け出すのをね」
「そ、そんなこと……」
「君が私を警戒していたのも知っている。私が不在の時を見計らって夜な夜な外出していたようだけど、今日はよっぽど余裕がなかったんだろう?」
「何をおっしゃっているのか分かりませんわッ! お父様ッ! 全てその女が来てからおかしくなってしまったのです。お兄様までもッ!」
ここに至ってもなお、フェレール辺境伯に縋ろうとするエミリア。
「ファル、弱めでお願い」
「あいさー!」
業を煮やしたレティシアがファルに命じる。
【ファッ!】
ファルの口辺りから発せられた虚無の波動がエミリアに迫る。
「チィッ!」
避けられる間合いではない。それにドラゴンテイルでの戦いで大ダメージを負っているはずのグランデリアに出来ることは限られていた。
両手を前に突き出すと、魔力を集中させて光を生み出す。
しかし、ファルの放った波動を完全に打ち消すことはできなかったようだ。ダメージを負ったのか息が荒い。身に着けていた寝間着はボロボロになり、破けた箇所から見える肌は塵のようになっている。とても人間の体には見えない。
「クソがぁッ! いつから気づいていた?」
「グランデリア、あんた、地が出てるわよ?」
「マスターもね」
ファルのぐうの音も出ないツッコミを華麗にスルーするレティシア。
「おかしいと思ったのはエミリアから神星力が感じ取れなくなった時さ。妹は神星術の使い手だった。もし君がエミリアだと言うなら、その結界なんて容易く破れるはずなんだよ」
「いつからこんな複雑な結界の術式を仕込んでいたと言うんだッ!?」
「いつからも何も異変を感じてから少しずつさ。最初は本当に何かの病気を患ったせいかと思ったから、あくまで念のためだったんだけどね」
「異変だとッ……。そんな馬鹿な……」
「今までは決定打がなかった。でもそれももう終わりだ」
ノディオンはそう言うと腰の剣をスラリと抜き放った。彼から信じられない程の殺気が発せられる。
「わたくしは、こんなところで死んでいい存在ではないんだッ!」
「いい加減、エミリアの姿を解けよ。ヴァンパイア」
「うっがぁぁぁぁ!」
変化を解き、本来の姿を現したグランデリアは、全ての力を込めた渾身の一撃を放つ。
迫り来る闇の奔流。
しかし、ノディオンは誰よりも速く動くと、その奔流をあっさりと斬り裂いた。
「なッ!?」
流れを分散され、霧散する闇の粒子の中から飛び出したノディオンは、そのままの勢いでグランデリアをも薙ぎ斬った。
「わたくしには……使命が……」
体を崩壊させながらも何やら呟くグランデリアを彼は返す剣で再び斬り捨てる。
グランデリアの体が徐々に黒い塵と化し、消滅していく中、レティシアは『未知なる記憶』の能力で《ヴァンパイアの心臓》と《鎧毒》の素材を回収したのだった。
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