23話 神人レガルド
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ヨシュアたちがぎゃあぎゃあと騒ぐ中、レガルドの連れの黒髪バンダナ男が見かねたように声を荒げた。
「お前ら聞けよッ! 聖遺物だぞ? 聖遺物ッ! 《神の思い出》って名前で白いクリスタルみたいな形状をしてるんだ」
「るせぇな。つーか誰だよ、お前は」
ヨシュアは急にしゃしゃり出て来たバンダナ男に面倒臭そうな顔を向けた。
「俺はダトゥ・コール。財宝探究者だ」
「んだよ。盗賊じゃねぇか!」
「ちげーよッ! 財宝探究者だつっただろうがッ!」
「どっちも一緒でしょうがよ」
「マスター! 話し方!」
ファルの叱咤がレティシアに飛んだ。レティシアの父親に「娘を頼む」と言われてからと言うもの、ファルはまるで保護者のような姿勢を取る様になった。特にレティシアの言葉使いなどに対して注意することが多い。これはレティシアの母親が物腰が柔らかく上品な言葉使いであったからだとレティシアは考えている。レティシアは戦いや面倒事に巻き込まれて興奮したり、面倒臭くなったりすると、口調ががさつになってしまうのである。それとは別に、気の置けない相手だとくだけた話し方になってしまうこともある。
ファルの視線を受けて、レティシアは深呼吸をして気を落ち着かせると、目の前の優男に丁寧に問い掛けた。先程までが汚いレティシアならば、今は綺麗なレティシアだ。
「あなたたちはどうしてその《神の思い出》とやらを探しているのかしら?」
いきなり雰囲気の変わったレティシアに困惑を隠せない様子の二人であったが、何とか気を取り直したのか、レガルドと呼ばれた男が口を開いた。
「それが僕の使命の一つだからです。申し遅れましたが、僕の名前はレガルド・キャンサー・ベレスフィード。神人、やってます」
それを聞いてレティシアは合点がいったと言う表情をする。神人と言うのは、要するに古代神やその下位神たちの使徒のことである。レガルドが神人だと言うのが本当ならば、《神の思い出》を探し出して集めると言うのは、ごくごく自然な行動だ。
『未知なる記憶』にはこう書かれていた。
――古代神ロギアジークを復活させるための力の欠片であり神星力の結晶。別名、星晶石。その身に宿すことによって古代神の加護と膨大な神星力を得ることができるが、その大いなる力に自我と魂が飲み込まれる可能性がある――
「神人ねぇ。あなたが神人であると証明できるのかしら?」
「確かに証明するのは難しいですね。僕も神人になってまだ日が浅いですし……」
「レティシアさん。レガルドが神人なのは私が保証するわ」
「そう言えば、二人は知り合いなのよね?」
「ええ、そうよ。彼を神人化したのは、私が住んでいた森の司教なの」
「僕がたまたま《宿星の種》を持っていたんです」
「《宿星の種》?」
「それを宿した者は生まれながらに強大な神星力を持っていて、古代神の使徒として神人になる資格があるのよ」
「ふうん……。なるほど……。あなたが言うならそうなんでしょう。信じ――」
「そうだ! 証明できるかも知れませんよ。僕は神人として、人々に《星々の加護》を与えることができるんです」
レティシアが信じると言い掛けたところで、レガルドが何か思いついたようだ。レティシアの言葉を遮って早口で一気に捲し立てると、右手で握り拳を作り、集中を始めた。レガルドの右手に大きな神星力が集まり、それが凝縮されていく。
「はい。これが《星々の加護》です」
レガルドはそう言うと握っていた右手を開いた。手の平の上には白くて丸い石がちょこんと乗っている。レティシアには確かに神星力が感じられたが、これが《星々の加護》だと言われても分かるはずもない。
「聞かせてもらえる? これを使うと、その人間はどうなるのかしら?」
「はい。僕の……神人としての神星力の一部が、これを宿した人に付与されるんです。それだけではありません。僕の力を呼び出してそれを行使することができます」
「あなたとの間にチャンネルが開かれて神星力が使えるようになると言う認識でいい?」
「その通りです」
それを聞いてレティシアは、《星々の加護》があれば《神の思い出》よりも安全に神星力が使えると判断した。彼女は『未知なる記憶』を使うことを決める。取り敢えずは、《星々の加護》のページに何が書かれているかを知る必要があるからだ。
「『未知なる記憶』よッ!」
その言葉に従い、レティシアの前にいつもの本が出現する。そして、今またここに新たな一ページが追加された。驚く一同を前に、レティシアはそのページを読み進めていった。
――《星々の加護》
古代神ロギアジークの使徒の加護を受けることができる。使徒自ら、これを加護すべき者に埋め込む必要がある。加護を受けた者は、その使徒の神星力を引き出し、神星術を行使できるようになる――
更に読み進めていくレティシア。それらを読んだレティシアは悩んだ末、『未知なる記憶』に収納されていた《神の思い出》を取り出した。皆の目の前に〝それ〟が姿を現した。
「これが、あのワン公の中に宿ってたのか」
「どう見てもただのクリスタルにしか見えないわねッ!」
「おお……これぞ《神の思い出》です……間違いない」
目を輝かせながらそれに手を伸ばすレガルド。その手がまさに触れようとした瞬間、レティシアは《神の思い出》を再び収納した。
「え?」
レガルドの呆けた声がその口から漏れる。
「あたしはただであげるなんて、ひとっことも言ってないわよ?」
「えッ?」
まだ理解しきれていないようだ。
「だーかーらー。交換よ。こ・う・か・ん! 《神の思い出》と《星々の加護》のね」
「ふッ……なるほど。商売人ですね……」
レガルドは感心したように呟くと何やら勝手に納得している。
「では、《星々の加護》をレティシアさんに付与しましょう」
その的外れな提案にレティシアは大きく溜め息をつく。
「ノンノン。分かってないようね。《星々の加護》は、あたしだけではなく、ここにいる皆に付与してもらうわ」
「えッ?」
再び間の抜けた声を上げるレガルド。
『え?』
更にはヨシュア、ミレーユの声が重なる。
隣ではファルが大きな溜め息をついて、何故か諦めたような表情をしている。
「せっかく神人様の加護をもらえるって言うなら、多くの人に与えて欲しいじゃない?」
「し、しかし、僕の加護とは言え、元はと言えば古代神ロギアジーク様の神星力……そう易々と渡す訳にもいきません……」
「そうだぞ? ちょっと欲が過ぎるんじゃねぇか?」
「レティシアさん、流石に欲張りだと私も思うわッ!」
「マスター、それはないよー」
レガルドだけでなく、ヨシュアやミレーユ、更にはファルまで批難の声を上げる。それを聞いたレティシアは、首をふるふると左右に振ると、全員に向かって懇切丁寧に語り始めた。その目に優しい光を湛えて。
「全員、何か勘違いしているようだけど。あたしはこの《神の思い出》を一人で手に入れたなんて傲慢なことは考えていないわ。あの狼男を倒せたのは、ここにいる全員の力があったからこそなの。分かる? 神聖なる古代神の力を悪の権化たる、あの狼男から取り戻せたのは、皆がこの《神の思い出》を神の御許へ返そうと一致団結した結果じゃない? 神人たるあなたが、これに報いなくてどうすると言うのかしら?」
「な、なんと……そこまで我が神のことを考えて……」
「そうだ……。俺たちはある意味、この世界を救ったんだな」
「レティシアさん……。そうだったわッ! 私たちはあの悪辣外道な狼男に正義を執行したのよッ! そうだわッ!」
レティシアは思った。こいつらチョロい、と。
ただ一人、レティシアの影から顔を覗かせたファルだけがジト目を彼女に送っていた。
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