22話 訪問者
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激闘から一夜明け、カルナック村はようやく少しだけ落ち着きを取り戻していた。怪我人は治療され、盗賊に殺された人々は村の墓地へと埋葬された。村はまだ悲しみに包まれているものの、大地に根を下ろして過酷な自然と共に暮らす人間は強いものだ。
治療を終えたレティシアは、広場に設置されているベンチに腰掛けて疲れた心身を休めながら今回の出来事について考えていた。
残念ながらホレスの息子は助からなかった。病気だと分かると盗賊はすぐに彼を殺してしまったらしい。どうやら盗賊たちに感染症だと思われたのだろう。ホレスのことを考えると心が痛むが、妻が無事だったのは不幸中の幸いであろう。
そして、《神の思い出》。宿ったのが脳筋の狼男だったからこの程度で済んだものの、もしも野心を持つ神星術士が手にしていたらと思うと、レティシアはゾッとする。強力な神星術によって、文字通り一掃されていたに違いない。
そんな時、場違いな雰囲気をまとった優男風の男性がレティシアに向かって近づいてきた。傍には野性的な感じの男性も一緒だ。たまたまレティシアのいる方向に近づいてきているのではなく、明らかにレティシアを目標にしている。その男性はレティシアの思った通り、目の前で立ち止まると、風で乱れたその薄い緑色の髪をサッと手で撫でつける。
「初めまして。お嬢さん。少しお話よろしいですか?」
「やだ」
にべもなく断ったレティシアに絶句する二人。
しばしの沈黙が降りる。
しかし、それはあっさりと破られた。男性は勝手に話を進めることにしたようだ。
「実はですね。僕は探し物をしておりまして……」
断ったのにもかかわらず勝手に話し始めた男に、レティシアは面倒臭そうな視線を向ける。
「とある聖遺物なのですが、その名を《神の思い出》と言います」
「ッ!?」
レティシアは思いもしない名前に驚きを隠すことができなかった。
男性はそんなレティシアの表情に気づいたのか気づいていないのか、困ったような顔をしたまま話し続ける。
「この村にあるはずなんですが、急に反応が消えてしまいまして……」
少し身を屈め、レティシアの顔を覗き込む。
「何かご存知ありませんか?」
こいつは分かっていて話しかけたのだろうか、とレティシアは若干戸惑った。
その時、レティシアの近くで大きな声が上がる。
「あーーーーーッ!?」
あの声はミレーユだ。
「あなた、レガルド・ベレスフィードじゃない! 一体こんなところに何しに来たのかしらッ!」
「おお、これはミレーユさんじゃないですか。お久しぶりです」
「馴れ馴れしくその名を呼ぶな」
ミレーユのいるところに、その漢あり。いつの間にか傍に佇んでいたミレーユの相棒、ヴィスタインがドスの利いた口調で邪魔に入る。ただし今は顔色が悪い。狼男の攻撃をまともに喰らって、吹っ飛ばされた時のダメージが残っているようである。
「ほうほう。ヴィスタインさんまで。奇遇ですね。ふむ。それでは、あの名前で呼びましょうか? ミレーユ・レイネ・フォーレスト様?」
「その名前で呼ばないでッ!」
「ならば一体どうしろと?」
ミレーユの嫌悪感の混じった叫びに、レガルドは当然のツッコミで応える。
レティシアは突然始まった掛け合いに、何だコイツラと思いながら、大きな溜め息をついた。そんな中、ミレーユを庇おうとしていたヴィスタインがその場にバタリと倒れる。レティシアは再び溜め息をつくと、近くを通りかかった探究者を呼んだ。
レティシアが見た限りでは、ヴィスタインは単に血液が足りていないだけだろう。食事を摂って安静にしていれば回復すると判断したレティシアはポーションを使うのを止める。彼の症状でポーションを使っても大して効果は見込めないのだ。
「衛生兵! 衛生兵! 急患がいます!」
レティシアの通報に応えて駆けつけた探究者はすぐにヴィスタインを担ぎ上げると、負傷者収容場所へと運んで行った。そこへ騒ぎを聞きつけたヨシュアが近くに寄ってくる。
「何やってんだよ。会議が始まるみたいだぜ? リーダーが死んじまったから、狼男を倒した俺たちにも参加して欲しいんだとさ」
「あたしは別に依頼で来た訳じゃないし……」
またまた面倒臭そうな言動を取るレティシアに、ヨシュアが何か思い出したように声を張り上げた。
「ってそうだ! 思い出したわッ! 会議なんかしてる場合じゃねぇよ! 何なんだよ! 戦いで使ってたあのよく分からねぇ能力は?」
彼の目には興味の色がまざまざと浮かんでいる。
「そうよッ! レガルドなんか相手にしてる暇なんてなかったわッ! 詳しく教えてくれるかしら? レティシアさん?」
「こらああああッ! 声が大きいわッ! 後で説明してあげるから、ちょっと黙りなさいッ!」
仕方のないことだったとは言え、衆人環視の中で『未知なる記憶』の力を行使してしまったのだ。レティシアの秘密を知る者は少ない方が良い。
一方で完全に蚊帳の外に追いやられた二人の訪問者は、茫然と佇んだまま動かない。
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