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深淵の探究者(アビス・ハンター)~稀代の錬金術士は深淵を覗きこむようです~  作者: 波 七海
第一章 工房の魔女

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10話 新興宗教

よろしくお願いします。

本日は三回更新です(1/3)

 レティシアは、もやもやする胸のわだかまりを発散すべく、散歩に出ていた。天気は雲一つない青空。胸に去来する無力感など吹き飛ばせそうな快晴である。そもそもレティシアはくよくよするのがあまり好きではない。

 上を向いて歩いている内に元気がどんどん湧いてきた。


「そうよッ! あたしには、受け継がれし奇跡の力がある。『未知なる記憶(アンノウンブック)』の謎を解き明かし、今まで存在しなかったものを生み出す使命がある。あたしはできるッ! 必要があれば、神さえ滅ぼす剣だって創り出して見せるんだッ!」


 レティシアが自分の声の大きさにふと我に返ると、近くに居た男性が奇妙なものを見るかのような目を向けていた。他にもあちこちから視線を感じる。

 右の方を向くと、井戸端会議でもしていたのだろう、三人の女性がこちらを見ながらにやにやしている。


 急に恥ずかしくなったレティシアはボソリと「素材さえあればだけど……」と呟くと、逃げるようにその場から立ち去った。

 顔を紅潮させて、しばらくひたすら足を動かしていると、広場になっている場所に出た。この辺りは普段は来ない場所なので、レティシアは興味深く周囲に目を向ける。すると、少し先で人だかりが出来ていることに気が付いた。演説のような声も聞こえてくる。興味を覚えたレティシアが近づくと、そこには思っていたよりも多くの人々が集まっていた。


 彼らの中心には体格の良い、薄い青色の法衣をまとった目の細い男性がいた。情熱的な言葉を吐いている割にはどこか冷めた印象を受ける。情熱と冷静が同居した、不思議な雰囲気を持っている男性であった。


「我らが神、ダイナクラウンは、古代より存在せし、慈悲深き神……。今、世界に命が満ち溢れ、生命がこうしてその生を謳歌できるのは、全て神の破力はりょくの恩恵故なのですッ!」


 声高らかに、そして詠い上げるかのように演説する男性の言葉にレティシアは、デイブから聞いた話を思い出す。


「神の名前はダイナクラウンか。デイブさんが言ってた新興宗教かな?」


 レティシアは、何か面白い話が聞けるかも知れないと期待して、人垣を構成する内の一人になった。


 そこへ人だかりの中から質問の声が上がる。


「スキッドロア司教と言ったか? ちょっといいかね? その破力ってのは何なんだい? 初めて耳にするんだが……」


「我らが戴く神は破戒神はかいしんダイナクラウンと言います。その力を破力はりょくと言い、破戒神の力を借りて行うのが破術はじゅつと言うものです」

 

 スキッドロアが疑問の声に応えると、また違う人から疑問の声が上がる。


「そうそう。その破戒神? そんな名前すら聞いたことがないんだが?」

「破戒神は創造と破壊を司る神です。例えば……」


 そう言うと、スキッドロアはスッと右手をかざした。彼の体が何かの力を発し始める。少なくともレティシアはこのような力の波動を感じたことはない。


「おいッ! あれを見ろッ!」


 突如として声が上がった。レティシアがそちらに目を向けると、人だかりの中から腕が一本生えているのが目に入る。その指は天空を指し示していた。人々が指差された方向に一斉に顔を向ける。


 視線の先では、奇妙な現象が起こっていた。何もないはずの虚空から、石ころのようなものが現れるやどんどんと膨れ上がり、人の頭程の大きさまで成長する。そして、辺りに指を鳴らす音が響いたかと思うと、その球体は空で爆発した。


「とまぁ、こんな感じですね。今のは無から有を生み、それをまた無に戻すと言ったところでしょうか」


 スキッドロアは、特に何でもないと言った感じで平然と言ってのける。

 しかし、納得できない人もいるようだ。


「今のが何だと言うのだ? あんなもの、手品でも可能だぞ?」

「うーん。困りましたねぇ……。いわゆる神星術(しんせいじゅつ)や魔術などと同様に回復や攻撃なんかもできるんですが……。喰らってみます?」


 スキッドロアの脅し文句に、文句をつけていた男性は沈黙した。

お読み頂きありがとうございます!

今後も頑張って参りますのでブックマークや評価★5をよろしくお願いします。

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モチベーションも上がりますので是非!

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