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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第二話 蛙教徒
9/49

4

翌日、宿を出た三人は、昨日と同じく町を歩いていた。やや風が強く、スペアは帽子で赤い巻き毛を抑え込む。


「そういえばいつもの車…」

「カプセルだ」

「悪い。カプセルはどこに置いてんの?」

「あれは畳んでこっちのポケットにしまってある」

「『畳んで』?…へえ、便利だな…」


中心部に近づくにつれ、人の数も増える。いつしか、宿から見えた巨大な教会の正面に来ていた。


「ここを出たらまたしばらくあれに乗ることになる。他に買うものはあったか?」

「うーん…」


と言いかけたハイネの顔が明るくなった。


「昨日の子じゃん!」

「何?」


あの少年が母親に手を引かれ、教会の正面扉からゆっくりと歩いてきた。


「また会えるとは思わなかったな。おーい、昨日ぶり」


ハイネは笑顔で手を振るが、少年は気づかない。


「#▽*■○!」


赤ん坊も何か叫んだが、やはり反応しない。


「…?」


スペアはためしに、少年に向かって手の先を軽く揺らした。ごく控えめな手の振り方だが、ようやく気づいたらしく顔を向ける。


そして母親の手をすり抜け、昨日と全く同じような足取りで近づいてきた。


「きみは・・・」


スペアはささやいた。


「昨日、背の高い女の人に会っただろう」

「おんなのひと?」

「ああ。今私の横にいる」

「?」


少年は不思議そうな顔で視線を彷徨わせ、


「どこにいるの」


と言った。


ひゅっと息を飲む音が隣から聞こえた。

スペアは続ける。


「赤ちゃんを見たね?」

「あかちゃん」


少年は繰り返す。


「…あかちゃん。みたっけ。みたかな。はじめて…」

「何してるの」


彼の腕を引いて歩き出したのは母親だった。


少年は足を少しふらつかせたが、そのまま抵抗もせずについていき、人混みの中に消えていった。

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