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「いやー楽しかった!やっぱり子供はかわいいねーあんたもいい櫛買ったかい?あっはっはっは」
店を出たとたん、妙に機嫌のいいハイネに出迎えられ、スペアは面食らった。
「何があったんだ」
「さっきそこで霊感のある子に会ったんだよ!わたしたちのことが見える子供に」
「ほう?」
「これくらいの男の子でさ、めちゃくちゃかわいかったわー」
「そうか…赤ん坊は不満そうだが」
「うわっ、怖い顔。そんな顔できるんだな…ごめんごめん、あんたが一番かわいいよ、怒った顔も」
「ところで、二人が誰にも見えていない理由が何となく分かった」
「え?」
宿は店から目と鼻の先にあり、部屋にはすぐにたどり着いた。
「どうも信仰が関係しているらしい」
「宗教絡み?」
「☆▲?」
「ああ。この国では、死後の魂はカエルの姿になると信じられている。そして虹の橋の上を跳び跳ねながらあの世へ向かうそうだ」
「?」
「亡者カエルたちは天国で、大ガマ様という神様から永遠の幸福を与えられる。大ガマ様を称えるため、人々は日常的に貢ぎ物を捧げたり、年に一度祭りを開いたりしている」
「??」
「この大ガマ様はさらに守護神ゲロゲロ様の眷属として」
「いや、もういい。大体分かった。えらくカエルが崇められているんだな」
「あの店にもゲロゲロ様や大ガマ様などの像をお祀り申し上げた祭壇があった」
「あんたちょっと影響されてないか?」
「説明してくれた店員が熱心でな、入信を進められたからかもしれん・・・あと、国の中央に白い建物があるだろう」
「ん?気づかなかったな」
「窓から見える」
「あっ、ほんとだ。かなり大きいな…目立つね」
「教会だそうだ。国民は皆10歳になるとあそこで洗礼を受ける。他にも儀式を執り行うらしい」
「ふーん…」
「この宗教は国中に深く浸透していると見て間違いない。国民の死生観に強く影響している」
「その教えじゃ幽霊や天使なんてあり得ないというわけか。それで霊感のない人間ばかりになっちゃうのかな」
「♭︎◎■」
「ちなみに悪人の魂であるカエルは地獄で牛に食べられるそうだ」
「なんで牛がカエル食べるんだよ」
「宗教に『なんで』はない」
「お祈りの言葉もゲロゲロ言ったりするのかな」
「神聖なカエルの鳴き声は安易に真似してはいけないそうだ」
「そうかい・・・」
話し込むうち、窓の外は次第に暗くなっていった。