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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第二話 蛙教徒
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2

謎が解けないまま、三人は中央部近くの店にたどり着いた。ガラスの扉の向こうに女性客がごった返している。


「ここでなんか買うの?」

「櫛だ」

「櫛?」

「前のものは歯が欠けてしまってな」

「ふーん」

「ハイネも入るか?」

「いや、買っても使わないしいいや。死人にクシなしってね」

「うまくない」

「すいませんね。とにかくいってらっしゃい」

「▼*○§*~」


スペアが店の中に消える。二人はぽつんと残された。


ハイネはぎらぎらした大蛇の目で辺りを見渡す。不気味な眼に気づく者はいない。すっかり慣れたはずの怯えた眼差しは、誰からも向けられなかった。


「…」

「◇…」


しかし直後、恐怖でも嫌悪でもない視線を感じたハイネは振り返った。

そこにいたのは5, 6歳と思しき少年であった。


「…?」

「…」


二人と一人はしばし沈黙する。


「…」


少年は近づいてきた。


(何?わたしが見えんの?…あ、今の言い回しは幽霊っぽいなぁ)


ハイネがそんなことを考えていると、少年の目線が腕の中に向けられる。

背の高いハイネはかがんだ。


「赤ちゃん?初めて見た?」

「…うん」

「見る?」

「うん」

「♭●◇!」


少年は赤ん坊のきらきらした顔を覗き込んだ。


「きれい」

「そうだろう」

「あかちゃん、かわいいね」

「そうだろう、そうだろう、もっと言いなさい」

「なあに、それ」


小さな笑い声がこぼれる。


「一人かい」

「…おかあさんときてる」

「今お店の中?」

「…うん」

「お外で待ってんだ」

「うん」

「#▼」

「あっ、しゃべった」

「喋るよ。何言ってるか分かる?」

「わかんない、なんていってるの」

「分かんない」

「えー」

「ふふ」

「おねえさん、なんでさっきから、おかおをてでかくしてるの」

「なんでもないよ、なんかまぶしくて」

「おめめがみえないよ」

「ちょっとなら見えるよ」


そのとき、店の人混みからほっそりした女性が姿を現した。その顔を少年と見比べてハイネは言った。


「お母さんじゃない?」


ぱっと振り向いた少年は急いで駆けていく。


「良い子にしてた?」

「…うん。おねえさんとしゃべってた。あかちゃんみた」

「おねえさん?」

「あっち」


少年はハイネと赤ん坊を指さす。

母親はいぶかしげな顔をしたが、やがて少年に向かって笑みを浮かべた。


「行きましょうね」


手を引かれて去る間際、少年はもう片方の手を、ハイネに向かって「ばいばい」と小さく振った。

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