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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第九話 人工天使
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3

昼間と違う口調で、同じ顔をして笑う女王は、きらめく祭壇を背に立ち止まった。

「グゼさん……」

「┌▽※▼┌★」

「女王様だったんですか」

ハイネはそうつぶやいたが、スペアは首を傾げた。

「あなたは男性では?」

グゼは薄く笑うと、右を指さす。水晶でできた椅子と机があった。

「少し長くなるゆえ、あそこで話そう。わらわたちの事情と、そなたらをここに呼んだ理由を」


全員が腰かける。グゼは祭壇を背に、口を開いた。

「この国では浄化の祈りの力を持つ者が女王に選ばれ、戦争と精霊が残した呪いの浄化を請けおう。女王は塔の中で祈りの務めを果たし、国民の前に姿を表すことはない。主に神官またはその見習いから選ばれるが、これまでは皆女性であったので、女王と呼ばれるようになった」

「なるほど」

「ハイネ。お主、魔女というたな。わらわも詳しくはないが、魔法については少し聞いたことがある。そなたに問いたいが、思うに、祈りの力というのは魔力の一種ではないか?」

「そうでしょうね」

ハイネが答えた。

「祭壇に向かって祈るんでしょ?あれは魔法発動を助ける道具だと思います。杖や魔導書みたいなもんです。ただこれだけ大規模なものを動かせるのは、浄化に特化した魔力をもつ者だけじゃないかと」

「やはりか」


異変が起きたのは数年前だった。女王候補をどれほど探しても国の中に該当する者がなかったのだ。占いによりようやく見つかったのが、遠い異国の地で生まれた男の幼子。

「それが…」

「そう、わらわじゃ。国の支えとも言える女王が異国の者、しかも男であるとは前例がない。 この国はしきたりを重んじる国民も多いでな、災いの前触れと騒ぎになることを避けるため、事実は秘匿された。だからわらわは、女王として育てられた」

「……」

「肌の色は見たら分かるゆえ、わらわがこの国の出でないことは騎士や神官たちも知っているが、男であることは、ごく限られた神官しか知らん」


「皆の言うことには、わらわの力は歴代のどの女王より強いそうじゃ。清めの能力を物体に込めることもできるほどに」

「それが昼間売ってた花ですか?」

「ああ。わらわが言い出したことじゃ。より直接、力を届けるために。神官たちは、籠りきりのわらわを哀れんで、花売り娘としてなら外出を許してくれた。市井の者に顔は知られとらんからな、あの時間だけは女王ではない、花売りのグゼよ」


「それでも浄化の祈りは土地に染み付いた怨嗟を、せいぜい人が暮らせるまで緩和できる程度。消し去ることはできない。毎日の祈りでその日をしのいでいるにすぎん…浄化が追いつかず、身体や精神を病んでいる国民もいる」

「移住はできないのですか?」

「この土地で産まれたものには呪いがまとわりついておる。離れたところで無駄じゃ」

答えられてスペアは肘置きを握りしめる。冷たかった。


女王は長いまつげを伏せた。

「…この国の平和はまるで氷の像。僅かな怠慢ですぐに溶けて崩れ去ってしまう。明るく笑っている者も、心の底では不安で仕方がないのじゃ。わらわにもっと力がありさえすれば…」

「そこにわたしたちが来た」

ハイネの声に、グゼは顔を上げ、その眼を見つめ返した。

「この顔が恐ろしくありませんか」

「先刻言うておったことか。いいや、美しい色をしている」

「光栄です。話を戻しますが、救世主と皆さんは言った。この子に現状を打破できる可能性があるということですか」

空を見ていた赤ん坊の目が、女王に向けられる。その視線を受け止めながら、グゼはゆっくりと言った。

「言い伝えがある。大地に染み付いた呪いを完全に浄化する方法が1つだけある。その鍵は名無しの赤ん坊が握ると」


祭壇の光る部屋、高い天井の先まで空気がしんとする。

「心当たりはあるか?」

「………浄化……」

「女王として頼みたい。どうか、民の不安を消し、この国を救うため力を貸しておくれ」

グゼは椅子を立つと、深々と頭を下げる。赤いドレスの袖が床についた。


「…思い当たることが、ないわけではありませんが…しかし…どこから話しましょうか」

そういったのはハイネだった。


「そうじゃな、もう夜も遅い。今夜は等の客室に泊まっていくといい。明日、詳しいことを聞かせてくれんか」

三人はそう言われ、一礼ののち退室した。

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