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塔の内部はいくつもの照明で明るかった。入ってすぐの大広間で、長い衣をまとった大勢の男女に出迎えられる。
広場の奥には階段があり、上った先の扉には厚い幕がかかっていた。
眼鏡の男が一歩進み出た。
「ようこそおいでくださいました。ここにいるのは皆、女王様にお仕えする神官でございます。私は彼らの長です」
彼は、真剣な面持ちで三人を階段の前に導いた。
「…あの、我々はどうして呼ばれたんでしょうか」
「それは、女王陛下が自ら説明したいとの仰せです」
長は垂れ幕を指差す。
「この幕の向こうに女王陛下がおいでです。早速ではありますが、こちらにむかってご自身の素性をお話しくださるよう、お願いします。一切の嘘は通用しないと心得てください」
「こんばんは」
「……こんばんは、女王陛下。自己紹介をします。」
まず、とハイネは赤ん坊を正面向きに抱き直した。
「この赤ん坊は天使です。名前はありません。死者の魂を導く力を持っています」
幕の向こう側からの返事はない。赤ん坊は小さく頭を垂れる。
神官たちがどよめいた。
「天使だって!」
「赤子の天使様とは初耳だ」
「天使をこの目で見られるなんて」
「やはり救世主様なのか」
二人は言葉を続けた。
「私の名はスペア。ロボットです。自動で動く機械の人形であります 」
「そして私はハイネ、幽霊です。生前は魔女でしたが、80年ほど前に落命し、今は力の大半を失っております。また、私は生まれつき通常の人間より何倍も大きい目を持っていますが、災いをもたらすものではありません」
今度は、神官たちの間にざわめきが広がった。“ロボット”“幽霊”など、聞いたこともないのだろう。ハイネは、階段の脇にいた神官が、眼を含めた自分の横顔を垣間見たのか、青ざめて息を呑むのに気づいた。
長が階段を登り、幕の向こうに消えたが、すぐに戻ってきて、
「お三方のみ、お入りください」
人々の目線を集めながら、スペア、ハイネ、赤ん坊は垂れ幕をくぐる。
中は広かった。天井が遥か高い。 塔の先端まで吹き抜けになっているのだ。遠くに小さく見える天窓から夜空が覗いている。
すぐに目に飛び込んできたのは祭壇だ。水晶と黄銅で作られた巨大できらびやかな祭壇は、奥の壁と一体化している。
祭壇の前に、豪華な椅子がある。 座っていたのは、赤く広がるドレスを来た人物だった。
「よく来てくれた。わらわが女王である」
その顔を見間違えるはずはない。
椅子から立って歩み寄ってくる女王は、長い足をもち、褐色の肌をしていた。




