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一方スペアと娘は、教会の裏口にいた。
「入り口近くはよく探したけれど見つからないんです…」
そういう娘に、スペアは尋ねた。
「指輪とは、指にはめる輪の形の装飾品ということで間違いないでしょうか?」
「へっ?は、はい、そうです?」
娘は怪訝な顔になるが、スペアはあまり気づかない。
「どんな特徴がありますか」
「えっと、えっと…色は銀白です。白金でできているので。中央に鋼石の…青い透明な石を嵌め込んでいます。」
「承知しました」
(人前でやるな、だったな)
スペアは先刻のハイネの言葉を思い出して、こう言った。
「では、手分けしましょう。私はあちらの方を探してきます。あなたはこの辺りを」
「は、はい」
姿が見えなくなるくらい娘と離れてから、スペアは顔に手を掛け、両方の目玉を外した。
(指輪はあまり見たことがないが、かなり小さいものだろう)
鎖骨の下の蓋を開き、体内から丸い機械を複数取り出す。
(白金というからには金属だろうから、この探知機にも反応するはずだ)
向こうずねの辺りから出したのはもう一種類の探知機だ。
(これは旧型だから性能はさほどでもないが、こちらの方が細くて小さな隙間にも入りやすいからな)
それぞれの機器は宙に浮き、自在に飛び回っている。そして動作に問題がないことを確認したのち、指輪捜索へと飛び出していった。
スペアの右の目玉は国の上空まで飛び上がった。ぐるりと一回転して全体を見渡す。
今自分が立っている教会の敷地は、国の中央辺りにあることが分かった。あの崖の上からは見えづらかったが、少し離れた場所に飴色の塔が、その回りに真珠色の建物がいくつかある。反対側には灰色の建物が集まる地域が見えた。あとは色とりどりの住宅や施設、公園が見える。
指輪を鳥がくわえていった可能性を想定し、目玉は、背の高い木にある鳥の巣を中心に見て回った。
一方、左の目玉は地面近くを這い回っていた。探知機も柵や蛇口など、目的外の金属にも反応を見せる。一度人入りの少ない草むらで反応があったので目玉を向かわせ見てみると、植物に隠れて土の上に奇妙な金属の部品があった。
(これは取っ手だな。しかし、なぜ地面に取っ手がついているのだろう)
どのみち、指輪ではなかった。
その後もしばらく探し回ったが、それらしいものは見当たらない。
(やはりすぐには見つからないか…)
スペアは一旦全ての部品を本体である自分のもとに集めた。
すると、金属の探知機が「チチッ、チチッ」と音を立てた。腰に下げた袋を向いている。
(おっと、電源を切っていなかった。集めた部品に反応したのだな…ん?)
だが、そこではたと思い当たる。
(もしかして……)
スペアは袋を開き、中の部品をかきまわして確かめた。
はたして、無数にある錫色の部品の間で、青い石をつけた銀白の輪が光っていた。




