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ハイネは赤ん坊を抱いたまま、縁石に腰を掛けた。花売りのグゼが、てきぱきと客をさばいているのが見えた。
グゼの褐色の肌は、この国の他の民に比べて明らかに濃い色をしている。それは単なる日焼けではなく、他国の血を引いていることを思わせた。
どの客にも向けられる、明るい笑顔が遠目にも分かる。愛らしい花売り。たまにその袖を引こうとする若者がいるが、グゼは捕まらない。いずれも蝶のようにひらりとかわしてしまう。
(すごい人気だな、あの人。みんなの憧れの的なんだね……)
また、よく見ると、花売りは一人ではなくなっている。荷車の回りに販売の仕事を手伝っている者たちが現れていた。同じく赤いスカートをはいた、壮年の女性や老婆が多い。やはり皆優しげな笑顔だった。他にも荷車をそばで支えている、やや強面の男性たちもいる。
(あの花はただの花じゃないな、魔法絡みの何か…)
スペアはまだ戻らない。
(あの子は身体中、性能のいい機械でできてるからな~。よくわからん探知機とか発信器とか取り外せる手足とか…だから探し物は得意なんだよな。何回かそれで報酬ももらってたし…何頼まれたか知らんけど、今回も見つけられるかな)
「■-△†」
「え?」
下を向いて考えを巡らせていたハイネの視界で、赤ん坊が何かを指差す。
布の靴をはいた褐色の足。
件のグゼが、いつの間にか目の前に来ていたのだった。
ハイネは慌てて頭巾を強く引っ張り、眼を覆って顔を上げる。
「お姉さん!花はいかが?まだ買ってないでしょう」
「あっ、えーっと……」
言いよどむと、グゼは腰に手を当てて首をかしげた。
「そういえば見ない顔だね。もしかして旅の人?」
「はい、そうです」
「道理で。ここにいる間だけでも、持っておいた方がいいよ。これは浄化の花なんだ」
意外な言葉に手が止まる。
「やっぱり知らないみたいだね。教えてあげるよ」




