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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第八話 指輪探し
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4

「ん?」

振り返って騒ぎの中心を目にしたのは、スペアよりも、その背後に控えていたハイネと赤ん坊の方が早かった。


色とりどりの花を山と積んだ車を引きながら、歩いてくる者がいる。

褐色の肌に、ぐんと延びた長い足。肩に届く長さの髪、溌剌とした笑顔。赤いスカートに白い前掛け、刺繍入りのブラウスの半袖からやはり長い腕が除いている。若々しく健康的な、鹿のように美しい娘だ。群衆の声が大きくなると、応えるようにその右手を大きく振る。

「グゼ!」

「待ってたよ!グゼ!今日の花はどんなだい」

男も女も口々にいいながら、周りを取り囲んだ。

「みんな!今日もたくさん買っておくれよ」

グゼと呼ばれた彼女は車を停め、にっこりと笑った。


すると、民衆の一人が、スペアの目の前の、さっきまで涙声でうつむいていた娘に近づいて、腕を引いた。

「あっ」

そのまま、人の輪の中まで連れていく。

「グゼ!聞いてくれよ!今夜はこの娘の結婚式なんだよ」

そうだ、そうだ、と人だかりが相づちを打つ。

「花婿は仕事でまだ来てないが、夕刻には間に合うさ」

「二人ともちっとばかしおとなしいが、働き者でいい子なんだよ」

娘は笑顔を作ったが、小刻みに震えたままで、顔も蒼白だ。

花売りはその姿を眺め、笑顔を返した。

「…花嫁さんか。おめでとう。花嫁衣装はこれから着るのかい?いいねえ。憧れてしまうよ」

おおっと周囲がざわめく。青年たちが軽く身を乗り出した。

「憧れだって」

「グゼの花嫁姿か…」

「そういうことならお前も花嫁にならないか?」

「そうだねえ」

「例えばおれとかの」

「お断りだね」

「なんでだよ!」

どっとその場が沸いた。

「さあさあ!今日の花はバラだよ!きれいだよ!めでたい式に出るなら、髪や服に飾っておくれ!買った買った!」

張り上げられた声を受け、荷車の回りにわあっと人が集まった。

「お式の前に疲れちゃいけない。休んでおいで」

グゼに優しく促され、娘は人の中心を離れる。


群衆は売り物の花に夢中だ。スペアは、ふらふらと離れた娘に駆け寄った。

「大丈夫ですか。何かお困りですか。それとも体調がお悪いのですか」

「す、すみません…すみません…その……」

娘の白い唇が動く。

「……実は、指輪をなくしたんです…」

「指輪?」

「誓いの儀式に使う、大事なものなのに…日が暮れたら、結婚式が始まっちゃう…みんなが準備してくれてるのに、どうしよう……」

(そういうことか)

スペアは頷いた。

「分かりました。私が探すのを手伝いましょう」

「え、えっ?」


突然の騒ぎにポカンとしていたハイネと赤ん坊を、スペアは振り返った。

「…あ。なんかあった?」

「☣?」

「あの花嫁の探し物を手伝ってくる」

「そうなんだ。じゃここにいるから、終わったら戻ってきてね」

「ああ」

そうして、戸惑った様子の娘とともに、帽子をかぶった赤毛の頭が遠ざかっていった。

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