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4 (裏)
「はぁ、はぁ…」
寿司屋だった男はしばらく道を走り続けた。
(あの黒い影…堕天使のやつだ間違いねえ…期限の朝はまだ来ていなかったのにどうして……)
海沿いの崖道にたどり着くころには、もうすっかり酔いもさめてふらふらになり、後ろを見たが、誰も追ってきてはいなかった。
足を止めかけたそのとき、海の向こうから朝日が上ってくる。その光が男の両腕を照らした。
「あ…」
黒い痣は、指の先まで広がっていた。
そのまま、男はばったりと倒れた。手の指が痙攣する。
死の間際、彼の脳裏に先程の子供の顔が浮かんだ。眠たげな二重の大きな目で、こちらを心配そうに見ていた。
(…あいつ、後ろにいた堕天使の野郎に気づいてなかったな……もう殺されちまっただろうな…最後にあんな子供見捨てて逃げちまうなんてな…)
(ごめんな、怖かったんだよ、分かってくれお嬢ちゃん……もう先に行ってるよな、あの世で詫びさせてくれ…)
そして意識は消えた。
崖下の波が、温い風に静かに揺られていた。




