46/61
2 (裏)
寿司屋は棚にあった酒瓶をつかみ、一息にあおった。本当は客に出す高い酒だったが、そんなことはもはや関係なかった。
あっという間に酔いが回り、膝をつく。
「○○○○○○○○○○〇」
「○○○○…○○○○○○○○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○○」
わずかな声と物音に、ふと顔を上げた。
店の入り口に、12、3歳ほどの子供が立っていた。古い帽子を被り、丸い眼鏡をかけている。
子供は心配げに眉をひそめていたが、寿司屋が立っていられなくなったのを見て、慌てて駆け寄ってきた。仰向けに倒れる男の背を支え、顔を覗き込む。
「なんだぁ…客か。もう店はしまいだぞ」
寿司屋は首を動かし、自分を支える子供を見上げて、女の子であることに気づいた。均整の取れたきれいな顔立ちをしている。赤い巻き毛と、眼鏡の奥の目の色から、異国の出身であることが見て取れた。
「…お嬢ちゃん、この辺の子じゃねえのか。じゃあ知らねえんだな、俺のことも…俺がどんだけ…」
寿司屋は酒の勢いのまま、べらべらと話し始めた。




