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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第七話 寿司屋閉店前
44/61

4 (表)

「あっ……」

「あー怖がらせちゃったか…眼は見せないようにしたはずだけど…」

「£α○」

黒い衣を引きずって、ハイネが店に入ってきた。


「いや、あんなに逃げる人は珍しいだろう」

服と帽子を軽くはたきながらスペアが答える。

「黒ずくめってだけで怖がる人もいるのかな。お化けと間違われたかも」

「&♭︎△■」

「いや、間違いでもないか…霊だし」

むき出しの眼の上で両眉がすまなそうに下がっている。


「ところで、どうだった?」

「どうも何も…彼が何の話をしているか分からなかった」

「ですよね」

「だがそういえば、途中で天井の方を見ていたな。おそらく、あれだ」

指差した先、蔦のような黒い模様が描かれた札が天井に貼ってある。その横には、白い花が釘で打ち付けられていた。


「あれは魔除けのお札だよ」

「魔除け?」

「うん、割とそこら辺の店でも売ってるやつ。ちょっと人を困らせる悪魔を追い払う程度の」

「悪魔?…確か天使と対になるような、悪の…だったか」

「うん、まあ、悪魔はいろいろよ。いたずら程度しかしないのもいるし、堕天使みたいなめっちゃ強いのもいる」

「堕天使」

「うん。規律違反で堕とされた元天使のこと」

「◎▲┘‡」

「強いのか」

「そりゃもう。天使の力が悪魔としての能力に引き継がれるし」

目をつけられたら並みの人は助からない、とハイネは言った。

「それは恐ろしい。そのためにお札を?」

「いやこのお札は別にそんな悪魔が対象じゃないから。開運とか商売繁盛のお守りくらいの意味合いじゃない」

「なるほど。あの花もそうか?」

添えられているのは、白く細かい花弁をいくつもつけた豪奢な花だった。

「さあ?…天竺牡丹だよな、これ? 最近の人はダリアっていうんだっけ」

ハイネは巨大な眼で、花をじっと見た。茎のところに、傷のようなものがある。いや、それは傷ではなかった。

(あれは文字だ。えっと……『血は…』)

一層目を凝らす。

(『血は生者の記憶』…?なにそれ?)

口には出さず読み上げたとき、もうないはずの心臓がきゅっと縮むような感覚がして、ハイネは眉をしかめた。

だが、その腕の中から、赤ん坊が静かに天井を睨み上げていたのには気づかなかった。


スペアはその間、乱れた椅子などを並べ直している。その背中に向かって、ハイネが言った。

「もうここは出ようか。わたしがいたら帰ってきづらいよね、あの人。体調は心配だけど」

「◆Ψ〇」

「あれだけ走れればきっと問題ないだろう」

「まあ、確かめようもないしね…言葉が通じないってほんと不便だな」

「ああ。もしいつか、この土地の言葉を習得する機会に恵まれたら、再度訪れるのもよいかもしれない」

「そうできたらいいねえ」


一行は店を出ると、扉を閉め、元来た道をたどっていった。赤ん坊だけが、暗い海の方をずっと見ていた。

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