1 (表)
白い壁の家が並び、僅かに潮の香りがする。三人は海沿いの街に入ったばかりだった。
「きれいな街だ。昼間は見晴らしもいいだろう」
眼鏡をずり上げて、周りを見渡しながらスペアが言う。
「結構高いところにあるから、海が見渡せるだろうね。お金持ちの家が多そう」
「@*」
ハイネと赤ん坊が応じた。
「にしては、えらく静かだが」
日が落ち、通りには街灯の明かりも人影もほとんどない。
「また街ごと幽霊だったりして」
「#×#$」
赤ん坊は首を横に振った。
「さすがに連続でってことはないか」
「なら、人通りが少ないのは単に夜だからだろうか。建物には明かりがあるな」
道を歩く三人は、ある建物の前に立てられた二つ折りの看板に目をとめた。
小さな置物のようなものが、たくさん並んで描かれている。どれも下半分は白いが、上半分は赤、橙、黄色など色とりどりだった。
「何だこれは」
「ん? これ寿司ってやつじゃん。この建物はお店みたいだし、売ってるんじゃない?」
ハイネが、建物の扉にかかった青い暖簾を見て言った。
「なるほど、商品か。しかし、寿司とは何だ? 随分可愛らしい見た目だが、おもちゃか?」
「あー寿司はね、食べ物だよ。一口大の握り飯に魚の切り身を乗せてあるとか」
「この白い部分は米だったのか。よく知っているな、ハイネ」
「まあ、わたしも食べたことはないけどさ。どっかの郷土料理らしいって聞い…」
言いかけた言葉は、看板の文字を見たことで止まった。
”××”
「なにこれ。見たことない文字なんですけど」
「店の中に人がいるようだが」
薄い扉の向こうから、声がしている。スペアは赤い巻き毛をかき上げて、聞き耳を立てた。
「×××××。×××××××。××××××××××××××××。」
「××××××××××××。××××」
「何を言っているか全く分からん」
「…もしかして、ここ、公用語が通じない地域なんじゃない?」




