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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第五話 母子
33/61

10

「さて、水でも汲んでこよう。東の方に淵があったからな。少し小屋の中を掃除したい」

「いいね。昨日の雨で流れが速くなってるかもしれないから気を付けてよ」

「ああ」

「でも何に汲むの?」

スペアは服を少しまくり、腹…についた扉をパカッと開けた。手を差し入れると桶を取り出す。

「あんたの体はどうなってるんだ…」

戸から出ていくスペアの背を見ながら、ハイネは唖然と呟いた。 


横を見ると、赤子二人が座ってこちらを見ている。

「さっきの遊びはやめたのね」

二人は並んで「他に何かない?」という眼差しだ。

「うーん、こんなのどう? わたしは舌が長くて、鼻の先につくんだよ、ほら!」

ハイネはべろーんと舌を突き出すと、その先を鼻の頭にぎりぎり届かせた。

赤ん坊二人は真剣な顔で見つめている。

「全然ウケない…」

行儀のよくない仕草を真顔で見られて気まずいまま、つりかけた舌を戻したそのとき、

ガタン!

と木戸が鳴った。


スペアだ。

さっき出ていったばかりの彼女は、右手に桶を、左手に木靴を提げている。

その顔は、逆光でも分かるほど真っ青だった。


「どうした?」

玄関まで移動したハイネの前に、スペアは濡れた靴を差し出した。

「なにこれ」

「覚えていないか。ニケさんがここを出るときに履いていたものだ」

「これをどこで?」

「……淵で」

「!」

水の染み込んだ靴。靴の裏を滴が伝いぽたぽたと地面に落ちる。

「…昨日の雨で濡れている。彼女が淵に沈んだとしたら一昨日より前…」

「探しにいかないと!」

「……それに……」

「なんだよ」


「……この靴は淵に向かって、爪先を向けて、揃えて置かれていた」

「えっ…」


ハイネの指先も、スペアの手も震えている。


「じゃあ、ニケさんは自分から淵に…?」

「……」

「そんな馬鹿な! 言ってたじゃないか、絶対に戻ってくるって、この子の母親なんだからって…」

そこまで言って、ハイネは気がついた。


「あっ、そうか」

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