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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第五話 母子
26/61

3

「!? あっ…」

互いにぶつかりそうになってよろける。

出てきたのは頬のこけた若い女だった。


(こんな山奥に他にも人が?)

スペアとハイネはそう思った。相手も同じだったらしく、驚いた眼差しで見つめ返す。

だがすぐに膝をつき、骨張った手でスペアの服の裾に取りすがった。


「お、お願いです、助けてくださいませ!」

「え?」

「子供が・・・」


言い終わらないうちに、同じ茂みから弾丸のような何かが飛び出した。ザッと地面にぶつかったのち、頭を上げる。

赤ん坊だった。

だが、様子がおかしい。四つん這いでこちらを睨みつける眼はあまりにも獰猛で、血の気のない顔色は明らかに死人のものだ。そして口から、長い牙が覗いている。

ハイネは凍りついた。

(この子、まさか…)


次の瞬間、赤ん坊が動いた。橙色の髪を振り乱し、飛びかかってくる。

「ヴ…ヴー!」

「!」

反応したのはスペアだった。赤ん坊の正面に飛び込むと、腕と胴をつかんで押し止める。

(強い!赤子の力ではない)

赤ん坊は暴れた。首と手足を激しく振り回している。

「スペア、だめだ!咬まれんな!」

ハイネか叫んだ。

「咬む?」

考える暇もなく、剥き出しの牙が腕をかすめる。スペアは、赤子を無理に引き寄せ、背中から羽交い締めにした。

「なんだ、この子は!」

「……」

ハイネの腕の中にいるもう一人の赤ん坊は、じっとそれを見つめたままだ。

「待ってスペア、今大人しくさせるから…」

そういいながらハイネは、茂みの向こう側に吊り橋を、さらにその奥に小屋があるのを見た。

足元にへたりこんだままの女に問いかける。

「あれはあなたの家?」

「え、ええ…まあ…」

「中に入ってもよろしいですか?」

「はい…」

そこで、彼女はハイネと目を合わせた。目の前の黒衣の女の、耳まで裂けた巨大な眼。

「――」

痩せこけた女は、声も上げずに気絶した。

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