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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第五話 母子
24/61

1

山。

木々をかき分けた奥の奥に、夕暮れの中、ぽつんと立つ家。

窓の少ない家の中には光があまり入らない。壁も箪笥も影法師のように黒い。

しかし目が慣れれば、ものが見えるようになる。


木でできた床の上に、赤ん坊が座っている。丸い目は、近くの箪笥から垂れ下がる衣服の紐に向いていた。

「…〒⊆*」

小さな手を伸ばしてぺしっと叩く。

ぺし

ぺし

ぺしぺし

ぺしぺしぺし

「+○」


傍らに、もう一人赤ん坊がいた。橙色の髪はまだ薄い。どう見ても首も据わらないほどの、生まれて間もない姿にも関わらず、誰の支えもなく床に座っている。

彼もまた、紐をぺしっと叩く。

ぺし

ぺし

ぺしぺし

ぺしぺしぺし

「ンー」

跳ね返る紐を追って右手を振り回す。その肌は蝋のようだ。血の色の透けない白。


「飽きない?」

傍でかかみこんでいたハイネが尋ねた。赤ん坊二人は振り向きもせずに、紐に夢中になっている。

「楽しいのかね」

「真剣だな、二人とも」

家の奥から、スペアが歩いてきた。まくっていた袖を元に戻しながら、近くに座る。


「しかしあの赤ん坊は本当に大人しくなった。あんなに暴れていたというのに」

スペアが呟く。

「空腹じゃなくなったからかもね。あと、先輩が指導したのかな?」

ハイネが笑いながら言うと、天使の赤ん坊は振り返り、えっへんといった風に胸を反らした。

「後輩ができて嬉しそうね」

「…ああ」

「どうしたのさ」

丸い眼鏡の縁に手を添えて、スペアが俯いた。


「彼女は帰ってくるだろうか…」


ひゅうと戸口で風が鳴る。


「…確かに、博打みたいなもんだっただろうね、あの人にとっては……いつになるかも分からないし、…でも、きっと帰ってくると思うよ」

「……」

「まあ、待とうよ。時間だけならいくらでもあるんだしさ、わたしたちには」


細い窓から、色硝子を通したような紫色の空が見える。

赤子らはまだ紐にじゃれついている。


その瞬間、音もなく玄関の戸が開いた。ざあっという音が風を集めて家の中に押し寄せる。


戸口に黒い人影が立った。


「!」

「ああ、ほら…噂をすれば、だ。思ったより早かったね」


人影が入ってくる。

橙色の髪の赤ん坊はそれに気づいた途端、歓喜の声を上げ、四つん這いの赤子とは思えない速度で玄関先へと向かっていった。

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