表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はぐれ三人  作者: agdpm0w
第三話 青紫陽花
15/61

4

 成人したばかりの貴族たちの入場は粛々と行われたが、スペアが姿を見せると、会場が一瞬ざわりと動いた。


(なんだ…まさかバレたのか?いや、ここで堂々としていなくてはかえって怪しい)


 参加者の反応は、このスペアの懸念と真逆のものであった。


「なんて美しい…一体どこのご令嬢だ」

「アヴォカド家だ。貴族とは名ばかりの貧しい家だぞ」

「娘は人前に出ず、同年代の友人付き合いもないと聞いていたが…ここまでとは」

「可憐で繊細な佇まい、まるで赤い紫陽花の花のようではないか」


 当の美少女は神妙な顔のまま、既に入場した新成人の集団に紛れ込む。


「評判は上々だな!やるじゃん、スペア」

「-○∂■」


 窓の外からその様子を覗く影が囁きあった。馬車の上に乗ってちゃっかり着いてきたハイネと赤ん坊である。


「あんたまでパーティーを見たがるとは思わなかったけど…」

「◎∞*▲!」

「面白い?」

「♭︎♪︎!」


 そのとき、会場から一際大きなどよめきが上がった。入場が終わり、大広間の奥の舞台に主催者一族が姿を表したのだ。

大きく掲げられた布に刺繍されているのは、四枚の萼片を持つ花の紋だ。

ハイネの大きな眼は、演説を始めた当主のカフスボタンを捉えていた。同じ花の紋、カニッツァロの家紋であろう。

「今、みんなが見てるのは当主のおじさんじゃなくて…娘さんだな。あの人が例の青紫陽花かー」

「%≦」


 挨拶を述べる当主の横に青いドレスの娘が立っている。潤いのある黒髪は腰まで流れ、長い睫毛に猫のような目、すっと通った鼻筋の美女は、口元に控えめな笑みをたたえ辺りを見ていた。

「大人っぽいね。お化粧も綺麗だな。瞼に薄いけど金色が差してある。口紅はボルドーか」

「◎$♯︎?」

 赤ん坊が窓近くのテーブルを指差した。中央に葡萄酒のボトルが置かれている。

「あ、分かる?そう、ボルドーはちょうどあんな色だよ、茶色がかった赤…何か、あの人といいスペアといい、この国では美人を紫陽花に例えるみたいね」

「◎〒」

「青紫陽花も許嫁がいなけりゃ引く手数多なんだろうけど」


 娘の隣には色白で垂れ目の男が寄り添っていた。彼の傍にいる親兄弟とおぼしき人々も皆垂れ目である。

「あのお兄さんが親戚さんね。スペアの方見てんな、ちゃんと気づいてるみた…」


「★□」

「ん?」


 赤ん坊は窓を見てはいなかった。あからさまな嫌悪の表情で一点を睨んでいる。

 視線の先では年かさのメイドが、使用人専用であろう扉から宮殿に入っていった。

「…∧■、⊆◎*」

 背中の羽根をうごめかせたかと思うと、赤ん坊は浮き上がり、小窓を通って建物の中に入っていく。

「あっ、待て!」

 ハイネは壁をすり抜けてそのあとを追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ