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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第三話 青紫陽花
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2

 しばらくのち、一行は屋敷の客間で向き合って座っていた。清潔ではあったが、建物はかなり古い。調度品もほとんどない、ごく質素な部屋だ。臙脂色の絨毯が敷かれた部屋は、灯されたランプで薄明るかった。


「スペア様とハイネ様ですね。旅のお方でしたか。私はアヴォカド男爵家が当主、フィリッポ・アヴォカドです。どこからお話しすればよいでしょう…」

 

 外套を脱いだ男はますます痩せて見えた。その口が開く。

「私にはマリイアという娘が一人おりまして、今年で十五になります。妻亡き後、私と使用人たちで育てて参りました。この国では十五歳になった貴族は、成人の証としてある社交パーティーに参加し、皆様に挨拶をしなくてはなりません。国のほとんどの貴族が参加する重要な夜会なのです」


 彼は一息ついて続けた。


「この夜会が今夜行われます。しかし昨日、娘は突然高熱を出して寝込んでしまいました。医者は命に別状はないといいますが、とても出席はできそうにありません」

「それは大変だ。しかし我々に何ができるのでしょうか」


 スペアは深刻な顔で尋ねる。

 男はしばし床を睨んでいたが、拳を握りしめ、頭を下げた。


「スペア様、あなたは私の娘に瓜二つです。どうか娘の代わりに夜会に出席してくださいませんか」


「何ですって?」

「え?」

「#@☆!」

 

 聞き手の三人はそれぞれ声を上げた。


「ご覧ください」

 

 男爵は角の丸い写真を差し出す。写っているのは窓際で読書をする少女。赤い巻き毛に、読書用と思しき眼鏡、目つき、鼻筋、口元、何もかもが、

「私だ…」

「すごいや。本人としか思えんな」

「はい、こんなことをお願いするなど、無理は承知ですが・・・あなた様にしかお願いできないと、お見かけした瞬間に思いました。それに、参加できなければ娘の将来に大きく関わります」


「なぜですか」


「先ほど申し上げた通り、国中の貴族が集う場です。情報を得たり、見合いの場になったりする会としては最も重要です。さらに不参加となれば貴族界からの印象は悪いものになります。特にパーティーの主催者であるカニッツァロ家は高位の貴族で、不興を買えば家の出世はまずあり得ない上、悪ければ取り潰しにされてしまいます。この家のような貧しい貴族などは…」

「それは大変ですね」


「カニッツァロ家にはもうすぐ次期当主となる一人娘がいます。三年前に成人したばかりです。大変な美貌の持ち主で、青い紫陽花と呼ばれるほどです」

「紫陽花?」

「ええ。気品と教養を兼ね備えた、知的で物静かな方です。…この方には許嫁がいますが、彼は私どもの親戚なのです。娘が小さい頃に遊んでくださったり、…彼ももちろん主催者側で夜会にいます。ご挨拶をしないわけには参りません…」


「…」


「スペア様、本当に夜会の一日だけで結構です。見ての通りあまり裕福ではありませんが、きっとお礼もいたします。お願いします!」

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