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はぐれ三人  作者: agdpm0w
第二話 蛙教徒
10/61

5

「洗礼が済んだからだろう」


三人は出国口に向かって、街中を進んでいた。


「彼は教会から出てきた。洗礼で信仰心を得て、霊や天使を感じとる心は失ったということじゃないのか」

「……確かに、宗教のこと分かってない子供だったから私らが見えたんだ。でも、あの子はまだ5歳かそこらだろうに、どうして…」

「見た目が幼いだけで本当は10歳だった可能性がある」

「……」


国境の壁が近づくにつれ、町の喧騒は薄れる。三人の間の沈黙がはっきりと感じ取られた。


「…なあ、考えすぎかもしれないけどさ」

ハイネがぽつりと言った。

「わたしはここの国民は霊感がなくて、霊やなんかは見えないんだと思ってた。でも本当はそうじゃなかったんじゃないかな」

「どういうことだ」

「見えてるかどうかまでは分からない。でも皆本当は私たちに気づいてて、けれどあえて無視してたんじゃないかって、教義に反する私たちを」

「…△*」

「あの子のお母さんもさ、息子が異端の存在に接しているのに気づいて、洗礼の日を早めたんじゃないかって」

「…この国には幽霊がいないと言っていたな」

「霊は国民の信仰心で完全に拒絶されてる。出て行きたくもなるさ」

「■○#…」

「…」

「…」

「…まあ、考えすぎかな」

「…そうだな」

「いずれにせよ、この国はカエルの宗教で支えられてるし、賑わってる。そういう国だ」

「ああ」

「でもあの子、わたしのことはきれいさっぱり忘れちゃうんだろうな。というかもう忘れてるだろうな。初めて見た赤ちゃんのことも」

「ああ」

「…」



出国口は人がまばらであった。

一人分の書類をてきぱきと処理した役人は口を開く。

「スペア様、入信はお済みではないのですか?」

「?」

「我が国では他国の方のゲロゲロ教への入信を歓迎しております」

「この宗教、そんな名前だったのか」

「♭︎◎△▼」

背後から声が聞こえるが、役人が反応する素振りは当然ない。

「教義の素晴らしさに気づき、移住を決められる方も多くいらっしゃいます。尊い神々の教えは幸福をもたらします。ぜひ、我々と共に歩んでいかれませんか」

「…」


脅すさまもなく、己の思う幸福を疑わない人間の単純な誘いであった。

スペアは次第に笑みが浮かぶ役人の顔を黙って見ていたが、やがて答えた。


「せっかくですが、やめておきます。友人に会えなくなっては困りますので」

「は?」

「神もよいですが、私は自分の目に見えるものから信じたいと考えております」


そのとき、スペアの帽子がひょいと宙に浮いた。帽子はくるくるくると三回転するともとの通り頭に収まった。


「えっ!?」

「いや、失礼。さようなら」


赤毛の少女は踵を返し立ち去っていった。背後をついてくる、乾いたくすくす笑いを聞きながら。

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