1
その占い師は腕がいいことで知られていた。
生まれつき未来を見る力があった彼女は、それを磨いて占いの道に進み、悩む人々に助言を与えていたのだ。
予知能力だけではなく、美しい容姿に、優しい物腰、親身になって客の相談に乗る姿は、多くの人の心の支えとなっていた。
それでいて客に大金を請求することは決してなかった。
長く占いを続けていた彼女もすでに老婆となり、いつの間にか客足は途絶えていた。
それでもなお路地裏で椅子に座り、水晶玉のふちを見つめながら、今日も迷う人の訪れを待っている。
ふと、二つの人影が占い師の目に留まった。
一つは小柄な少女。赤い巻き毛に古い帽子を被り、大きな眼鏡をかけている。
もう一つは痩せて背の高い女で、頭から爪先まで真っ黒なローブを纏っていた。
「もしもし、お嬢さん方」
振り返った二人に老婆は続けた。
「この辺りに宿はありませんよ。西の方の地区へお行きなさい。もうじき暗くなりますから…」
「……」
二人は老婆を見つめ返したまま何も言わない。
「あの、どうかされましたか」
「…ありがとうございます。我々が旅の者とお気づきに?」
少女が返答した。
「失礼いたしました。わたくしは占い師でして、通りすがりの方のことでも少し見えるのです」
「それはすごい」
黒服の女の方が感嘆の声を上げる。ローブから覗く色素の薄い金髪に隠れ、顔はよく見えない。
「いえいえとんでもない。年寄りのお節介でつい申し上げたまでです。」
「ずっと占い師をなさっているのですか?」
「ええ。とはいえ長いことお客様もいらっしゃいません」
「そうなんですか」
「悩み事がないのが一番ですから、喜ばしいことですけれどね」
老婆は静かに微笑む。二人は顔を見合わせた。
「お二人はお悩みごとはありませんか。何かあれば占いますよ、相談に乗らせてくださいませんか」
控えめに尋ねた占い師に、「それなら」と近づいてきたのは赤毛の少女だった。