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2022.7.17 九州大学文藝部・三題噺

成り上がり、冒険、失敗

作者: 平田貞彦

 「吾輩は猫である。美味しい猫である。食べて。」


 その時、相手をマインドコントロールして自らを捕食させる奇妙な生態を持つネコが現れた。大きさはネコというよりトラだったから、力では勝てないとすぐにわかって、怖くなって逃げ出した。そネコに刻み込まれた頭の中の「食べたい」をかき消そうと唇を強く噛み締めた。血が出たけど、それに構う暇もない。脚にだけ意識を向けてひたすらどこかへ走った。


 視界が晴れ、さっきまで居た暗い森からなんとか抜け出せたことがわかった。ハァと息を吐く。全力疾走は身体に毒だよ、息も絶え絶えにそう思ったのも束の間、腹の奥から何かが込み上げてきて、耐えきれずに吐いてしまった。出てきたのは、それはそれは大きな毛玉だった。びっくりしたよ。逃げ切ったと思ったのに、もう食べちゃってたんだ、ネコ。どういうわけなんだろうね。


 そこからは、胃を空っぽにする作業だった。かつてネコだったあらゆるすべてが口から出てきた。吐ききった頃には明るかったはずの視界が真っ暗になってた。夜の帳が下りてたんだ。もう走る気力はなかったから、街までは歩くことにした。あの時ほど自分の脚が重たく感じたことはない。ここまでひどい失敗はこれまでなかったし、これからもないだろうと思った。


 冒険者ほど楽しい仕事はないと思っていたが、どうやらそれは成功してる間の話だったらしくて、一回の失敗で面白いほど心が折れてしまったんだ。笑ってくれよ。そして、糧にしてくれ。他人の失敗から学んで、是非高みを目指してくれ。


 






 「ふーん。」状態異常のチュートリアルにしては話が長かったな……。

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