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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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季節外れのお花見

 次の日の土曜日、もう桜は散り始めて、新緑葉っぱが混じっていてお花見所じゃないが僕と高岡さんとお母さんで少々季節外れのお花見をすることになった。


 周りには屋台があまりやっていないことにちょっと寂しい気持ちにさせられる。


「さあ、高岡さんに純君、ここにブルーシートを引くからそこに座って待っていなさいね」


 僕と高岡さんはブルーシートの上に座って、多少季節外れのお花見をすることになった。


「純君、今日は私の事を誘ってくれてありがとね」


「いや、お礼ならお母さんにしてよ。以前お見舞いに来てくれた事がとても嬉しかったみたい」


「さてお花見タイムと行きましょうか?」


 お母さんは重箱を取り出して、僕達にお母さんが作ったご馳走を堪能することになった。


 辺りではお花見をしているのは僕達だけであった。


 事の始まりは昨日の放課後、家に帰って、お母さんがお花見をしようと言うことになったのだ。


 それで高岡さんも電話で呼ぶように言われて、僕は高岡さんの携帯に連絡を入れたら早速OKをしてくれた。


 高岡さん言っていたよ。僕達とお花見が出来るなんて面白そうと。


 まあ、そういう事で少々季節外れのお花見をすることになった。


「たくさん食べてね、お母さん腕によりを尽くして作ったお弁当だから」


 お母さんが得意げに言う。


「じゃあ、いただきます」


 そう言って高岡さんはおにぎりを頬張った。


「おいしいです。こういう所で食べるお弁当は格別においしいです」


 高岡さんも絶賛している。


 お弁当箱には唐揚げや卵サンドおにぎり、唐揚げなどが入っていた。


 僕がお箸で大好きな唐揚げをつまむと、本当にお母さんが作ってくれたお料理はおいしかった。


 子供体系に戻ってもお母さんはお母さんだ。ちゃんとその役割を果たしている。


 僕は唐揚げを頬張りながら、辺りの景色を傍観していた。


 ここは団地外の土手であり、遠くを見つめてみると、河川敷の向こうに広大な隣町が傍観できる。それに桜もチリチリだが眺める事が出来て僕は嬉しかった。


「本当にここからの景色は最高だね」


 いつも学校では僕の事をからかってくる癖に今日はお母さんがいるからか僕の事をからかったりはしなかった。


「ねえ、高岡さん。純君は学校ではいつもどんな感じなの?」


「どんな感じと言われても、とにかく勉強もそこそこ出来て、友達は私ぐらいしかいないけれど、何とかうまくやっていますよ」


「そうなの。純君のお友達は高岡さんだけだったの?」


「はい。クラスでは多少いじめもありましたけれど、委員長の私がそんな事はさせませんから」


「えっ!いじめられているの!?」


「はい多少そう言う事もありましたけれど、私が守ってあげています」


「そうなんだ。純君、いじめられやすいタイプだからお母さん心配だよ」


 高岡さんの言うとおり僕はクラスで孤立してしまっている。それに委員長の高岡さんも僕と同じように孤立してしまっている。


 いつも高岡さんには助けて貰っているが、高岡さんにはいつも僕の事にちょっかいを出してきたりしてからかわれている存在になってしまっている。


 お母さんには学校の事は伏せて置きたかった。そうしないとお母さんが僕の事を心配するからだ。僕はお母さんに心配かけたくはない。


「高岡さん。純君の事をよろしくお願いね」


「はいこちらこそ。純君の事はお任せください」


「本当にお願いね」


「はい。純君の事は私に任せてください」


 そう言ってお花見は続行された。


「ジュースもあるから、高岡さんどんどん飲んでね!」


「ありがとうございます」


 本当に僕と高岡さんはクラスで二人だけで孤立している状態だった。


 何でそうなったのかは、僕が高岡さんの事を意識していると周りから囃し立てられて、それで僕達は孤立してしまった。


 孤立して僕はいつも高岡さんにちょっかいを出されている。あれだけはやめて欲しいと思っている。


 でもこうして高岡さんとお花見をしていると、何か気持ちが高ぶったりした。高岡さんは何か隣町の景色を見つめていた。


 高岡さんっていつもちょっかいを出してくるがこうして黙っていると凄く可憐な感じがする。


 高岡さんは、こうして見ると高岡さんってかなりの美人さんだ。


 そんな風に見つめているとお母さんが「純君、何高岡さんの事を見つめているの?」と嫌みたらしく言われてしまった。


「べ、別に見つめていないよ」


 と嘘をついていた。


「まあ、良いけれど、お母さんは心配しているんだからね。それに高岡さん純君の事をいつまでもよろしくお願いしますね」


「はい!」


 良い返事をする高岡さん。


 高岡さんだけなんだよな、僕のお母さんがこんな子供の様な姿になってしまった事を知っているのは。

 それにまだ、通販から着る物が届いていないのか?お母さんは僕が着ている体操着を着用している。


 お花見の屋台で金魚すくいがあった。

 とりあえず、それをやることになった。


「あら、あなた達金魚すくいをやるの?」


「はい」


「じゃあ、高岡さんの分も私が出してあげる」


「そんな、悪いですよ。純君のお母さんにそこまでして貰うなんて」


「良いのよ、そんな事よりも純君の事を学校でもよろしくね」


 そう言う事で高岡さんの分はお母さんに出して貰って、僕の分は僕のお小遣いでやることになった。


「純君、勝負しようか?」


「勝負って何の勝負をするの?」


「どちらが金魚をたくさん捕れるか勝負しましょう」


 正直、僕は自信がなかった。


「もし、この勝負で負けたら、どうなるの?」


「うん。そうね。もしこの勝負で負けたら、デコピンって言うのはどうかしら?」


 まあ、それぐらいなら良いだろうと思って僕は高岡さんと金魚すくいの勝負をする事になった。


 実を言うと僕は高岡さんにこのような勝負を持ち来られて勝てた記憶がない。だから今日こそは高岡さんに勝ってやると心の中で豪語している。


 よし、一匹目ゲット、高岡さんの方を見てみると、高岡さんは金魚を二匹捕まえていた。


 このままでは僕が負けてしまう。


 よし、あのデメキンをゲットして、二匹目をゲットしてやる。


 そこで隣の小さな男の子のお兄ちゃんと女の子の妹がいた。


「お兄ちゃん。あのデメキンかわいい」


「よーし、お兄ちゃんに任せておけ」


 その様子を僕はぼんやりと見ていると、水につけすぎたのか?金魚すくいの紙が破れてしまった。


「はーい。純君の負けね」


 僕が一匹で高岡さんは二匹取っている。


 それよりもあの兄妹デメキンはゲットできたのか?その様子を見てみると。


「ゴメンな、デメキン一匹しかとれなくて」


「う~ん」


 悲しそうな目をしている妹。


 僕は一匹取った金魚をその小さな兄妹にあげた。


「君達、これ上げるよ」


「えっ、本当に良いんですか?」


 続いて高岡さんも「私のも上げるよ」


「ほら、幸子金魚が四匹になったぞ。ありがとうございます」


 妹の幸子と言うのか?その幸子ちゃんもありがとうと言ってその場を去って行った。


 もう桜の季節は終わろうとしているのに、何人かの人で少しは賑わっていた。


 でも本格的にお花見をしているのは僕と高岡さんと僕のお母さんだけであった。


「純君って優しいんだね」


「そんな事はないよ」


 でもあの兄妹が喜んでくれたことに僕はとても嬉しかった。


「さて、罰ゲームは罰ゲームよ純君」


 おでこにデコピンを入れようとしているのか?僕は覚悟を決めてそのデコピンを受けるように目を思い切り瞑った。


 来るぞ!


 と思った瞬間に、おでこに何か生暖かい感触がした。


「はいデコピン終了」


「高岡さん、今何をしたの?」


 一部始終僕達の行動を見ていたお母さんは優しい目をして僕達の事を見ていた。


「お母さん。高岡さんはデコピンしたの?」


「とりあえず、今度は三人でバトミントンでもしましょうか?」


「ちょっとお母さん」


 高岡さんが僕に何をしたのかは不明であった。


 今度は高岡さんとバトミントンで勝負になることになった。


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