ついにお母さんの秘密が高岡さんにばれてしまった。
風邪で休んでいる僕に委員長の高岡さんがやってきた。それにタイミングが悪いことにお母さんまで帰ってきてしまった。
「あら、あなたは純君のクラスメイトの人?」
「そ、そうですけれど、純君が今日学校を休んだのでプリントを持って、それにお見舞いに来ました」
「ちょっと、ちょっと、お母さん」
そう言ってお母さんを奥の部屋へと連れて行き、高岡さんに聞こえないように小声でお母さんに言った。
「お母さん。その体型でお母さんと名乗るのはよして」
「どうして、純君は私の子供なのに」
「とにかくその子供の体型になってしまったお母さんを見たら、誰もが驚くでしょ!」
「大丈夫よ。純君は私のお母さんなんだから」
「とにかくダメだって、とりあえずお姉さんと名乗ってよ」
「分かった分かった。そうするから腕を強く握るのはやめなさい」
そういう事で、玄関で待たせている高岡さんにはお母さんの事をお姉さんだと言うことに言い聞かせた。
とりあえず、お見舞いに来てくれた高岡さんを家に入れて、僕が大好きなプリンを高岡さんに用意してくれた。
「高岡さんだっけ、純君のお見舞いに来てくれてありがとね」
心なしか高岡さんは不機嫌な感じでいたような気がした。
高岡さんにお母さんがこんな小学生みたいな体になってしまったことがばれてしまったらやっかいな事になってしまう。
「あの、あなたは本当に高橋君のお姉さんでしょうか?」
「そうよ。私は純君のお姉さんよ」
「そうですか」
すると高岡さんは僕の顔を険しい顔で見てきた。
何かその顔も意味深な気がしてならなかった。
「ちょっとお姉さん、トイレに行ってくるわね」
そう言ってお母さんはトイレに行ってしまった。
「ねえ、高橋君、あの人本当にあなたのお姉さんなの?」
「そうだよ。お姉さんだよ」
「嘘つくと許さないわよ。高橋君よりも背か低いじゃない。どうしてあの子が高橋君のお姉さんなの?」
「見た目で人を判断しちゃいけないよ。とにかくあの人は僕のお母さん、じゃなくてお姉さんだから」
「じゃあ、ちゃんと私の目を見て物を言いなさいよ。それにあなた今、『お母さんじゃなくてお姉さん』って言ったよね」
やばいぞ。僕のお母さんの秘密がばれてしまう。
すると、高岡さんは目を細めて、
「何か複雑な事情があるみたいね」
「だから、あの人は僕のお母さん・・・」
つい語気を強めて言ってしまった。あの人は僕のお母さんだって言うことを。
「フーン。あの人は高橋君のお母さんなんだ。ずいぶんと子供の様な体型をしているわね」
僕は本当の事がばれてしまい。視線を反らしてしまった。
「ちゃんとこっちの目を見て言いなさいよ」
僕はまともに高岡さんの目を見ることが出来なかった。
リビングに飾られてある、写真を見て、大人だった時のお母さんの写真が写っているのを高岡さんは見逃さなかった。
「まさかとは思うのだけれども、あなたのお母さん不思議な事があって、子供の姿に変わってしまったんじゃないかしら?」
「そんな不可解な事があるわけないじゃん」
「じゃあ、どうして私の目を見ないの?」
「いや、その、それは」
「やっぱりあの人は高橋君のお母さんね。何か不思議な事があって、高橋君のお母さんが子供のような体型になってしまったのね」
「はい!」
僕はついに認めてしまった。
あの銀髪でかわいらしい人が僕のお母さんだと言うことを高岡さんにばれてしまった。
「とにかく高岡さん。この事は内密にして貰えないでしょうか?」
「まあ、別に良いけれど、あなたお母さんに恋をしたりはしないよね」
「しないしない。どうしてそんな単語が出てくるの?」
「なら、良いけれど」
高岡さんにこれから僕はからかわれる事になってしまうかもしれない、お母さんの事で。
お母さんはトイレから戻ってきて、高岡さんの目を見て言った。
「ちょっと待っていてね。今お茶を出してあげるから」
「はい。高橋君のお母さん」
「あら、高岡さんだっけ、私がお母さんだって事がばれてしまったのね」
僕はもう半泣き状態だった。
「どうして高橋君のお母さんがこんな子供の様な体型になってしまったの?」
「それは分からないけれど、つい先日このような体型になっちゃったわけでありまして」
お母さんは笑ってごまかすような仕草をした。
「ふーん。そうですか。確かに信じがたい事ですね」
「高岡さんだっけ、この事はあまり人に話さないで置いて貰えないかしら、私は良いんだけれども純君が嫌だって言っているから」
「分かりました高橋君のお母さん。この事は他言無用にしておきます」
「そうしてくれるとお姉さん。嬉しいな」
何がお姉さんだよ。元は三十五の癖して、本当はもうおばさんなのに。
「純君、今心なしかちょっとお母さんに失礼な事を思ったような気がするんだけれども」
口では笑っているが目が笑っていない。
「そんな事ない。僕はお母さんの事を失礼に思うわけないじゃん」
さすがに僕のお母さんはかなり洞察力のある人だと思った。
お母さんを怒らせると凄いからな。
★
高岡さんはプリンもお茶も食べて、帰る事になった。
「もうちょっとゆっくりしていけば良いのに、何ならお夕飯食べて行かない」
「いえ、大丈夫です。私は高橋君にいや純君にプリントと明日の連絡事項を伝えて来ただけなので」
「じゃあ、高岡さん。純君の事、これからもよろしくね」
「はい。こちらこそ」
そこで僕は、
「本当にお母さんが子供の体型になってしまったことは他言無用にしてね」
「分かっているわよ。こんな不思議な事、誰かに話すのはもったいない気がするから」
心なしか高岡さん、僕のお母さんが子供になってしまったことを楽しんでいないか?
「じゃあ、純君もう熱は治まったみたいだし、明日学校に来るようにね」
高岡さんは委員長だ。僕がいじめに会いそうな時に助けてくれたっけ、それに高岡さんは僕にちょっかいを出して来るのはやめて欲しいと思っている。
★
次の日の金曜日、今日は体育はないので、お母さんに体操服のままいられる。
朝ご飯はトーストにジャムをのせた奴だ。
僕はそれを食べて学校に出かけようとすると、団地の前でお母さんが行ってきますのチューをしてきた。
「じゃあ、純君、車には気をつけるのよ。それと自転車にもね」
お母さんは僕の事を心配して言ってくれている。
お母さんにほっぺにチューをされる所を見られたら、僕はいじめられてしまうだろう。
それだけは断固として阻止しなければならない。
「純くーん」
手を振ってやってきたのが高岡さんだった。
「あっ高岡さん。昨日はどうもありがとう。おかげで助かったよ」
「私も面白い体験が出来て嬉しく思っているんだけれどもな」
やっぱり僕のお母さんが小学生の体型になってしまった事を楽しんでいるように見える。
高岡さんと学校に行き、一緒にクラスに入ると、「ヒューヒューやっぱりお前等付き合っているんじゃないの?」
すると高岡さんはナイフの様な鋭い視線を向けた。
そうしたら、そいつは何も言わなくなってしまった。
さすがは委員長、威厳が違う。
「さあ、純君。一時間目は国語だから、国語の教科書を出して置いてね」
「はい」
そう言って国語の教科書を出した。
クラスで僕の名前を言うなんていじめの的にされてしまうんじゃないかと危惧していたが、全然そんな事にはならなかった。
さすがは委員長。
そしてホームルームが始まり、朝の挨拶をして、国語の授業が始まる。
本当に高岡さんが委員長で良かったよ。他の人が委員長だったら、僕と高岡さんは孤立してしまっただろう。
授業中、高岡さんは僕にからかう事をしてきたのだ。