将来のお嫁さん
今日は土曜日でお休みの日だ。
僕と小百合さんは互いに闘志を燃やし合い、小説を書くことに没頭していた。
小百合さんにも麻美ちゃんにも負けていられない。
★
そんな事をしていると時間はあっと言う間に過ぎてしまった。
お腹がすいたので何か食べようと冷蔵庫を開けると、お母さんは僕と小百合さんの分の昼食も作ってくれていた。
メニューは焼きそばだった。
お母さんはリビングのソファーで眠っている。
お母さんはお疲れモードなのに僕達にこんなに気を使ってくれるなんて嬉しかった。
でもお母さんは無理をして欲しくない、そう思いながら冷蔵庫に入っている焼きそばを僕と小百合さんで食べることになった。
僕達が小説を書いている間、お母さんは焼きそばを作ってくれていたみたいだ。
「残念だな」
と小百合さんは声を出して言った。
「何が残念なの?」
「亜希子お母さんに焼きそばの作り方を教われば良かった」
どうやら小百合さんは料理に目覚めてしまったみたいだ。
将来の僕のお嫁さんの小百合さんの手料理を食べられるのはもうすぐになっているかもしれない。
いや今朝お母さんにウインナーの焼き方を教わったのだからもう食べてしまっているけれども。
将来こんな美人な人と結婚できる事を思うと胸がドキドキする。
「純君、何嫌らしい目で私の事を見ているの?」
「別に嫌らしい目で見ているわけじゃないよ」
「じゃあ何なのよ」
「小百合さんの手料理食べて見たいな何て考えていた」
「そう。私達は将来結婚するんだもんね。亜希子お母さんに花嫁修業をして純君においしい手料理を食べさせてあげたいな」
この上ない笑顔で小百合さんは言う。
「とりあえず、小百合さんお母さんが作ってくれた焼きそば、チンして食べよう」
「うん」
僕と小百合さんの分の焼きそばを電子レンジにそれぞれかけて食べることになった。
二つともチンして僕と小百合さんはお母さんの焼きそばを食べることになった。
「やっぱり亜希子お母さんの手料理はおいしいね。家の母親のとは訳が違うよ」
「そう言えば、小百合さんのお母さんってどんな人なの」
「まあ、普通のお母さんかな、お父さんは海外に出張しているけれども」
「ふーん。今度小百合さんのお母さんを紹介してよ」
「別に良いけれども」
「じゃあ、決まりね」
すると玄関の所からチャイムの音がした。
誰かと思って、出てみると、栗色の長い髪に円らな瞳の小百合さんを大人にしたような感じの人が現れて、すぐに小百合さんのお母さんだと言う事が分かった。
「こんにちわ」
「こんにちわ、小百合さんのお母さんですか?」
「そうですけれども、あなたが純君?」
「はい、そうですけれども」
「うちの子います?」
すると小百合さんが玄関の所に来て、
「あっ!お母さん!」
「あら、小百合、今日も高橋さんの家にやっかいをかけているの?」
「別にやっかいなんてかけてないですよ」
と僕が言う。
「そうですか、小百合が何か迷惑をかけていないか心配で」
すると後ろからお母さんが出てきて、
「あなたが小百合さんのお母様ですか?」
「そうですけれども、あなたは純君のお姉さんですか?」
「まあ、お姉さんと間違われるのは良くありますけれど、私は純君の母親の高橋亜希子です」
すると小百合さんのお母さんは目を丸くして驚いている。
お母さんが子供体型になってしまった事を公言するのは面倒な事になりそうなので小百合さんが。
「お母さん。これには色々と事情があるのよ」
「どう見たって子供にしか見えないけれども」
それはそうだよねと思っていると。
「実を言うと子供のまま成長して今は純君を一人で育てているみたいなのよ」
「信じられない話かもしれないけれどもそれは本当の様ね」
するとお母さんが、
「立ち話も何ですから、家に上がってお茶でも飲みながらお話でもしましょうよ。あなたの娘さんの小百合ちゃんはとても良い子ですね」
「そんな、良い子だなんて」
照れている小百合さんの母親。
「さあ、高岡さん。中へ入ってください」
「それじゃあ、お邪魔しましょう」
と小百合さんの母親は家の中に入ってきた。
小百合さんのお母さんはテーブルの椅子に座ってお母さんが今お茶を出そうとしている。
お母さんがお茶の準備がし終わって、「どうぞ」と言って小百合さんのお母さんは「ありがとうございます」本当に嬉しそうに言う。
「最近純君と遊ぶようになってきて、うちの小百合の成績がどんどん伸びてきたんですよ」
「それはきっと小百合ちゃんが本気で夢を追いかけたいと言う気持ちがそうさせているんですよ」
「そうなんですか?ちなみに小百合の夢って何なんですか?」
「保母さんになりたいと思っているらしくて今は勉強に小説なんて書いていますよ」
「小百合が保母さんになりたいだなんて、それに小説を書いているなんて、私にも見せてくれないかしら?」
「って言っているけれども、どうする小百合ちゃん」
大人の話は長くなりそうだからその場を僕と小百合さんが立ち去ろうとしていると、小百合さんがビクッとする。
「まだ、小説は書き終わっていないし、まだ見せられる状態じゃないよ」
「お母さん。保母さんになりたいとか、小説家になりたいとか聞いていないわよ。私が唯一知っているのは最近少林寺拳法を習いたいって承諾しただけなのに」
そこでお母さんが、
「うちの子に感化されて、入ったみたいなんですよ。ちなみに私は少林寺拳法四段でありまして色々な技を教えたりしてあげています。近々、私もまた少林寺拳法を習い直そうとしている所なんですけれどもね」
「何か家の小百合は純君と付き合って、良い意味で影響を受けているみたいですね」
二人で話している間、僕と小百合さんは大人の話は長くなりそうだから、僕達は席を外そうと言って、外に出て、施設の子供達の所に行くことにした。
僕は自転車を用意して小百合さんを後ろに乗せて僕達は施設の子達がいつも遊んでいる場所まで行った。
「何か僕、安心したな」
「何が?」
「小百合さんのお母さんはいい人で」
「まあ、普通のお母さんだけれどもね」
「それが良いんじゃないか、僕のお母さんなんて、あんな子供になって、本当にてんてこ舞いって感じなんだよ。それに小百合さんのお母さんを見たとき、小百合さんも将来あんな美人になると思うと、僕は鼻が高いよ」
「何言っているのよ、純君」
後ろから拳を喰らってしまった。これは少林寺の基礎で拳が当たる瞬間に力を込める事を小百合さんはやった。
「痛いよ小百合さん。運転中に僕に暴力を振るうのは勘弁してよ」
「純君が変な事を言うからです」
「別に変な事は言っていないじゃん」
「言っているよ」
「ごめんなさい」
と謝って置いた。
「分かれば良いのよ」
そんな話をしながら、河川敷を走っていると、剛君達が見えてきた。
「剛君、あっ君、凛ちゃんに明」
僕が大声で呼ぶと四人は僕達の元へとやってきた。
「あれ、今日は亜希子お母さんは?」
剛君が言う。
「まあ、ちょっと野暮用が出来てしまって」
「麻美から聞いているわよ。何か小説で亜希子お母さんに見せて勝負するって」
明が言う。
「それで今日は麻美ちゃんは?」
「図書館にこもって小説でも書いているんじゃない?あの子夜遅くまで小説を書くことに没頭していたから、小百合ちゃんと純君には負けられないって」
すると丁度そんな時、麻美ちゃんがやってきた。
「麻美ちゃん。小説捗っている」
麻美ちゃんの顔を見てみると目に隈が出来ている。
「何も聞かないで」
そう言って麻美ちゃんは剛君が持っていたボールを奪取して、バスケットコートまで走って、ドリブルをしながら、バスケットゴールにシュートを決めて一回転してニカッと微笑み、ピースサインを送っている。
僕と小百合さんはそんな麻美ちゃんを見て、顔を見合わせて笑ってしまい、心が和んで、僕達もバスケットに参加することになった。




