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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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お母さんと一緒に

 学校の放課後、僕は委員長の女子の高岡亜希子さんに言われた。


「ちょっと高橋君。今日どうして体育休んだの?」


「体操着を忘れて・・・」


「へー案外抜けているのね」


「抜けて何ていないよ」


「じゃあ、今日も図書委員の仕事手伝って貰える?」


「今日はお母さんに買い物を頼まれていていけない」


「そう。じゃあ、明日学校で」


 僕はそのまま下駄箱まで、上履きから靴に履き替えて、帰りにコンビニに寄ってお母さんに頼まれていた卵を買って帰路に出た。


 僕はこの団地外の二階に住んでいる。


 一昨日まではいつもの生活に慣れていた。けれども昨日から生活に違和感を感じながら生きる羽目になってしまった。


 お家に帰ると、僕は「ただいま」の挨拶をして、家の扉を開いて、そこで待っていたのは僕のお母さんだった。


「お帰り、純君」


「ただいま、お母さん」


 お母さんは銀髪のロングで、背は僕よりも若干小さく、顔は凄くかわいらしく童顔であろうことか今日体操着を忘れたのはお母さんが子供の様に小さくなって僕の体操着を着ていたからだ。


 お母さんは子供のような体型になってしまって大人用の服を着ることが出来なくなったからだ。


「純君、お母さんにただいまのちゅーは?」


 僕はお母さんの言葉を遮るように「今日頼まれていた卵買ってきたよ」


 卵が入ったビニール袋をお母さんに手渡した。


「ありがとう。純君、純君は優しいのね」


 お母さんは子供らしからぬ、大人びいたような表情で笑顔で言ってくれた。


 とりあえず靴を脱いで、家に入り、リビングへと行く。


「純君、今日のおやつはチーズケーキよ」


 お母さんはチーズケーキの入った箱を取り出して、お皿に盛って僕に手渡してくれた。


 僕はリビングのソファーに座って、お母さんはその向かい側のソファーに座った。


「今日は学校はどうだった?転校二日目だけれどもちゃんとうまくやれた?」


「うん。うまくやれているよ」


「友達は出来た?」


「まだ友達は出来ないけれども、仲良くなれた人はいた」


「そう。今日は体育の授業があったけれども、うまくやれた」


「体育は休んだ」


 するとお母さんはテーブルを叩いて「何で、まだクラスになじめていないの?」


「お母さんが僕の体操着を着ているからでしょ」


「あっそうだった。お母さん着る物はこれしかないから、通販で買った物がまだ届いていないのよ。それに下着だって着ていないんだから」


「そんな事は言わなくて良いよ。もっと僕のお母さんらしくしてよ」


「しているじゃない。ここまで純君を育てて来たんだもん。純君は今年で十歳でしょ。後一ヶ月後には正式に十歳になれるのでしょ。その時はお友達も呼んで良いから、盛大に誕生日をお祝いしましょうね」


 そんな事を言ったって今のお母さんは十歳のかわいい女の子でしかない。


 それにこれからどうなるんだろう?


 チーズケーキも食べ終わって僕は部屋でテレビゲームをしていた。ちなみにお母さんはカチカチと翻訳家の仕事をしている。


 お母さんは子供のようになってしまったが中身はちゃんとした大人だ。


 どうしてお母さんはいきなり子供になってしまったんだろう。


 それよりも明日の支度をしなくてはいけない。


 明日の予定はっと。


 そう言いながら時間割の教科書やノートをランドセルに入れた。幸いな事に明日は体育はない。


 さて、ゲームの続きをしようとしたところ、お母さんが僕の部屋に入ってきて、


「ちょっと純君、ピコピコは一時間までよ」


 そうだった。僕は調子に乗ってピコピコをしてしまっていた。


 僕はゲーム機をしまって、テレビを消す。


「そろそろお夕飯だから。リビングにいらっしゃい」


 そう言ってお母さんは僕の部屋を出ようとしたところ、足下に下敷きがあってそれを滑らせて頭から転んでしまった所をお母さん僕がお母さんは危ないと思って盛大に転げ落ちる瞬間に僕がお母さんを全身でかばった。


「大丈夫純君。怪我はない?」


「大丈夫だよ。お母さんが軽くて良かったよ」


「お母さんの体重は31キロだって」


 お母さんは僕の背中に座ってお母さんって柔らかいと思ってしまう。


「純君はお母さんをかばってくれたんだね。やっぱり純君は優しい子だね」


 子供と化したお母さんの笑顔に内心ドキッとさせられてしまう。


「今日は純君の好きなハンバーグよ」


「本当に!?」


「ええ、本当よ」


 お母さんと食卓まで言って、リビングに二人分のご飯が用意されていて、お母さんの言うとおり今日は僕の大好きなハンバーグであった。


「うわぁ、おいしそう」


「もりもり食べてね」


 リビングの席に座ってお母さんと一緒に「「いただきます」」と言ってハンバーグを食べた。


 やっぱりお母さんの作ったハンバーグはとてもおいしい物だと思った。


 本当に世界一おいしいと思っても過言じゃないと思う。



 ★



「何で一緒にお風呂に入らないのよ!」


「だって僕もう小学四年生だよ。もうお母さんとお風呂に入る何て恥ずかしいことは出来ないよ」


「昨日まで一緒に入っていたじゃん。もしかして純君体に変化でもおきたの?」


「それはお母さんでしょ」


「それもそうだった。お母さん。子供の様な体型になっちゃったもんね」


「とにかく、お母さんとは一緒にお風呂には入れないよ。だから一人で入ってよ」


「うぅ~」


 お母さんは残念そうにお風呂場に行く。


 そうだ。それで良いんだ。小学四年生になってまでお母さんとお風呂に入る事なんて出来ないよ。


 お風呂場を覗いて見ると、ちゃんとお母さん一人でお風呂に入ったかなと確認をしてみると、お母さんは涙していた。


 そんなに僕とお風呂に入りたかったのか?それに泣いてしまうだなんて。


「分かったよお母さん。一緒にお風呂に入ってあげるよ」


「本当に!?純君大好き」


 そう言ってお母さんは僕の体操着を脱いで裸になったところ、僕はお母さんの体を見て、妙にドキドキとしてしまった。


「さあ、純君もお風呂に入りましょう」


「やっぱり一人で入って」


「えーーーー!!」



 ★



 お風呂は別々に入ることとなり、お母さんは僕の部屋に来て並んでお布団を敷いた。


「これなら良いでしょ」


「これなら良いって、僕と一緒に寝ようとしているの?」


「別に良いじゃない親子なんだから」


 まあ、別に良いか。


 時計は午後九時半を示している。僕がいつも寝る時間は十時であった。


「純君が眠るのはいつも十時だね、それまでに絵本でも読んであげようか?」


「僕はもうそんな子供じゃないんだよ」


「子供じゃない。どう見たって」


「それはお母さんだって一緒じゃないか」


「お母さんはこんな姿になってしまったけれど、純君を産んだちゃんとしたお母さんだよ」


 それは一昨日までの話だ。


「とにかく電気消すよ」


 僕が電気を消すと、お母さんは僕の布団に入ってきて、後ろから抱きつかれて眠ってしまった。


 お母さん寝相が悪いのは自覚していなかったんだっけ。


 大人の時もそうだったが子供になったお母さんの匂いって良い匂いがする。


 その匂いと共に僕は眠りについてしまった。



 ★



 翌朝、お母さんに起こされて学校に行く前にちょっとだけ、外を散歩しようと言われて僕は少し眠くて断ろうとしたが、別に散歩ぐらいなら良いかと思って、お母さんと共に外に出た。


 春の朝はとても心地よかったのだが、何かちょっと寒い。


 小鳥たちがチュンチュンと鳴いている。


 お母さんは僕の手を握って散歩をしている。


 こんな所を同級生に見られてしまったら、僕はどうなってしまうのだろう。


 団地を抜けると河川敷があり、景観のいい隣町まで見渡せた。


 そして僕とお母さんは反対側の団地を向いて僕は思ったんだ。


 今日から僕達はここで暮らすのだと。


 何かそう思うと何か幸せな感じがした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 導入がとても自然。 [気になる点] なんでお母さんは子供になってしまったのだろうか? [一言] 続きが気になる作品です。 今後も読ませていただきます。
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