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第9話 警護

翌朝、夜明けと共に村を出発する。


ぎっしり荷物の積まれた荷台は全部で4台。

うち3台は、1台に付き牛の様な生き物を2頭つけて引かせ。

残り一台は10人がかりで押していた。


一応道は開かれてはいるが、綺麗に整地などされていない足元はぼこぼこしていて歩きにくい。

当然そんな道で荷台を引くのは大変な重労働だ。

出発して30分ほどしかたっていないのに、荷物を引いてい人達の額には玉の様な汗が浮かび、息遣いも荒い。


「やっぱ俺も手伝った方が良くないですか」


警備に集中して欲しいと言われて手ぶらで歩いていた俺だが、見かねて声を掛ける。


「いえ……はぁはぁ……大丈夫です。ですから万一に備えて……はぁ……どうか警備に……集中してください……」


息も絶え絶えの中年男性が俺に応える。

村を襲われ重いトラウマを抱える彼らからすれば、魔物対策を出来るだけ万全――俺に無駄な消耗をさせない――にしておきたいのだろう。


気持ちは分からなくもない。

だがこのままだと、隣村に着く前に押している人間がダウンしてしまう。


「いやどうみても無理でしょ」


俺は荷台の前に回り込み、取っ手を掴んでん引っ張った。

すると荷台は一気に加速して進みだす。


荷台は想像していたよりもずっと軽い。

というか、俺の腕力が凄いと言った方がいいか。

これもレベル99になった恩恵だろう。


「大丈夫。ちゃんと警備の方もしますから」


「すいません。……お願いします」


2度の小休止を挟み、昼過ぎぐらいに森を抜けた先にある隣村へと辿り着く。

幸い魔物との遭遇はなかった。

平原にあるその村の周囲は立派な策に覆われ、大きさは森に囲まれた小さなヘキソン村の軽く3倍以上はある。


「ヘキソンの村長さんじゃないか。そんな大所帯で一体どうしたってんだ?」


村の門に立つ兵士らしき男が此方に気づき、駆け寄って来る。


「実は――」


村長が門番に簡単に事情を説明し、俺達は村の中に通された。

村に入って真っすぐ進むと大きめの屋敷があり、俺達はそこに案内される。


「お父さん!!それにリーンちゃんも!」


小綺麗な妙齢の女性が村長達に駆け寄ってくる。

村長の娘さんだろう。

この村とは近隣という事で古くから付き合いがあり、村長の家に娘が嫁いでいると事前に話は聞いている。


「村が魔物に襲われてな。村人の半分以上が死んだ。ポレルとケーンの奴も……」


「そんな!?」


女性は村長の言葉を聞き、軽くよろめく。

それを後から来た男性が受け止めた。


「今の話は本当ですか?」


「ああ……」


恰幅のいい男性に村長の娘さんが縋っている所を見ると、彼がこの村の村長なのだろう。


「皆さん、大変だったでしょう。どうぞ中にお入りください」


屋敷の広場の様な場所で水や食料を振る舞われた所で、何人かが泣き始める。

この数日、緊張の糸が張り詰められていてた。

やっと安全な場所に来れたと感じた事で、それが緩んでしまったのだろう。


これからもきっと色々大変だろうが、俺がしてやれる事は何もない。

俺自身、人の事を構っている余裕などないからな。

せめて彼らがこれから先平穏無事に暮らせる事を祈るばかりだ。


「師匠」


「ん?」


リーンが俺の服の袖を掴む。

その眼は涙ぐんでいた。

弟子だ何だと言ってはいても、この子も心の糸を張り詰めていたのだろう。


しかし村長は話をする為別室に向かったので、縋りついて泣ける相手がここにはいない。

俺はリーンを抱き寄せ、頭を撫でてやる。


「うっ……うぅぅ……」


ん?

あれ?


俺は気づく――抱き着いて静かになくリーンの胸元が、若干膨らんでいる事に。


「マジかよ!」と心の中で叫んだ。

どうやらリーンは俺っ子だったらしい。

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