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第5話 飛翔

「いきなりカンストかよ!」


キューブで自分のステータスを確認して思わず声を上げる。

俺のレベルが99にまで上がっていたからだ。


まさか竜一匹でカンストしてしまうとは……


それだけ異界竜の経験値が多かったのか。

それとも、村人と言う残念な職業の必要経験値が特段少ないのか。

あるいはその両方か。


「しかし、どのくらい強くなったんだ?」


キューブは呼び出す際ステータスと言うワードで呼び出す訳だが、そこには残念ながら筋力やHP等という情報は載っていなかった。

あくまでも職業やレベルと言った大雑把な物、それとスキルとその説明だけだ。


「まあスキルがレベル99まで上がって1個って考えると、能力の方もあんまり期待はできそうにないな」


習得していたクラススキルは1つ。

【空気】と言うスキルだった。

これは存在感を希薄にし、自然と周囲に溶け込むスキルの様だ。


アサシン系列が持っていそうな、隠形系の弱い版と言った所だろうか。

あくまでも気づかれにくくなるとか、そう言ったレベルの効果しかない様だ。

流石村人のスキルとしか言いようがない。


「これはあんまり使い道さなそうだけど、称号スキルの方は凄いな」


称号スキル。

それは強力な魔物を討伐したり、大きな功績を達成した際に習得できるスキルだ。

俺が得た称号は異界竜の討伐者という物で、2つの称号スキルを習得出来ていた。


パーフェクトレジストとインバイルド。


パーフェクトレジストは言ってしまえば、状態異常完全無効の耐性スキルだ。

パッシブスキルで常時発動してくれる。

そしてインバイルドは、かけると一度だけダメージを無効にしてくれるというアクティブスキルだった。

残念ながら重ね掛けは出来ない。


どちらもかなり強力なスキルだ。

弱い村人からすれば全ての異常を無効化し、しかも不意打ち等を1度カバーしてくれるこれらのスキルは本当にありがたい。


それとパーフェクトレジストを習得して分かった事だが、やはりというか、どうやら俺にはマインドコントロールが掛かっていた様だった。

キューブに解除の情報(ログ)が入っている。


一体何時掛けられたのか?


心当たりはなくもない。

この世界に連れて来られた時、俺は女王アイリーンの言葉をすんなり受け入れている。

それは普通に考えれば有り得ない事だった。

つまり、あの時点で既に俺はマインドコントロールされていたと言う事だ。


「召喚された時……か」


それ以外考えられない。

そしてマインドコントロールされていたのは俺だけではなく、あの場にいた全員がそうだろう。

そうでなければ、あの雰囲気の説明が付かない。


「しかし、どうした物かねぇ」


クラスメート達は洗脳されていい様に利用されている。

何とかしてあげたいという気持ちはあるが、俺にそれが出来るかと言われれば甚だ疑問だった。


確かに永久コンボは発動すれば最強のスキルだが、逆に言うと攻撃を当てられなければ発動する事が出来ないスキルだ。

同時発動数に制限がないとはいえ、兵士に囲まれてしまったら攻撃を当てている間に槍で串刺しにされてしまうのは目に見えている。


「まあ村人の俺と違って、他の奴は勇者だったり聖女だったりするからな。そう簡単には死なないだろう。今は兎に角、自分の事だけを考えるとしよう」


そもそもここがどこかも分かっていないのだ。

冷静に考えて、他人の心配などしている余裕などなかった。


俺はドラゴンが塞いでいた、出入り口の通路を真っすぐに進む。

中は薄暗いが、洞窟全体がうっすらと発光している為全く見えないと言う程では無い。

お陰で壁にぶつかったりせず、真っすぐ進む事が出来た。


やがて強い光が差し込む出口が見えた。

何となく、嬉しくなって駆けだす俺。

光の中に飛び込んだ俺の視界に広がったのは――


「断崖絶壁かよ!」


断崖絶壁に開いた横穴。

それが出口の正体だった。

下を見ると、軽く100メートル以上先に地面が見える。


うん、無理。


「はぁ……」


俺は溜息を吐き、通路を引き返した。

そして洞窟内を2時間ほどかけて確認してみるが……


「出口が…………ねぇえ!!!」


どうやら異界竜が出口を塞いだのは、嫌がらせの為のパフォーマンスだった様だ。

普通の人間では、どう考えてもあの高さから脱出するのは不可能。

何が倒して出て言って見せろだ……糞ったれ。


そう言えば、あいつは洞窟からどうやって出入りしていたのだろうか?

全体を確認したが、当然ドラゴンが通れるような通路も無かった。


「まあ異世界から人間を呼び出せるんだから、転移能力か何かでも持っていたんだろうな」


って、そこまで考えて気づく。

あの異界竜なら俺を元の世界に戻せたんじゃないかと。

まあ殺してしまった以上、後の祭りだが。


「考えても仕方ないか」


俺は覚悟を決めて絶壁へと戻る。

出口はここだけ。

飛び降りれば遥か下方の地面に激突して、即死は免れないだろう。


だが俺には新たに手に入れたスキルがある。

そう、一回ダメージを無効化してくれるインバイルドと言うスキルだ。

これを使って即死を回避して着地する。


問題は痛みだ。

ダメージを無効化してくれると言うが、痛みの有無が分からない。

体がバラバラになりかねない衝撃だ。

もし痛みを感じる様ななら、瞬間的なショック死もあり得た。


「…………取り敢えず、降りれる所まで下りるか」


焼け石に水かも知れないが、少しでも高度を下げれば痛みは減る。

……かもしれない。


「まあ他に行き場がないんだ。やるしかないか」


一難去ってまた一難。

せっかくドラゴン相手に生還できたというのに、またすぐに命がけの行動をしなければならないとは……全くついてないぜ。


俺はインバイルドをかけ、地面に這いつくばる形で下半身を絶壁に乗り出した。

少しづつ体を下げ、突起を部分に足をかける。


「うわぁ……無理くせぇ」


足をかけた部分が即座に崩れ、弱音が零れた。

うん、こりゃ無理だ。

俺は高度を下げる事を素直に諦め、覚悟を決めて岩壁を力強く蹴り飛ばした。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


体が激しく横に移動し、岩壁が一瞬で遠く離れていく。

その距離は軽く10メートルを超えている。

どうやらレベルアップで相当筋力が上がっていた様だった。


……まあこの状況下では、だから何だと言う話ではあるが。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


体が重力に引かれ、真っすぐに落ちていく。

地面が高速で近づき、激突と同時に俺の意識は途切れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い テンプレというよりは王道と呼ぶべき作品 [気になる点] しかしなぜ村人がそんなチートスキルを持ってたのかの理由付けが欲しいところ クラスが低い代わりにスキルが強いとかだったら、そも…
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