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第23話 巣穴

「ライティング!」


テアが魔法を唱える。

坑道内と違い、ウォーアントの巣には電灯の様な光源はなかった。

そのため、魔法で視界を確保しなければならない。


「げ……」


巣の中を少し進むと、広大な空間に飛び出した。

あり・アリ・蟻、正に蟻塗れだ。

そこには軽く100匹以上の蟻が群れている。


蟻も俺達の存在に気づいたのか、カチカチと顎を慣らし此方を威嚇して来た。


「おうおう、こりゃ大量のお出迎えだな」


視界いっぱいに群れる蟻の姿を見て、別パーティーのリーダーだったモロゾフが軽く口笛を吹いた。

かなり余裕そうだ。

相当自信があるのだろう。


「俺達鉄の剣が正面にでる。お前らは左右を頼むぜ 」


モロゾフが、魔導士の女性以外の五人を引き連れて一歩前に出た。

どうやらこのパーティーは、同じギルドの人間で構成されている様だ。


「ヘマするんじゃないよ。もし死ぬなら、賭けの金を払ってから死にな」


「誰が死ぬかよ」


「「カチカチカチカチカチカチ」」


モロゾフさんパーティーが前に出た事で、蟻達が顎を激しく鳴らしながら此方へと押し寄せて来た。


蟻達の鳴らすこのカチカチ音。

これは巣内にいる仲間に危険を知らせる為の物だそうだ。

ここでちんたらしていると、次から次へと援軍が来てしまうだろう。


「あたしらは右辺(うへん)だ」


ライラさんはそう言って俺の肩を叩くと、右側に走って行く。

他のメンバーもそれに続いた。


「おらぁ!」


直ぐに戦闘が始まった。

俺は出来るだけ突出しない様気を付けながら、近づいてくる蟻を始末する。


「こいつか」


兵隊蟻は一目でわかった。

働きアリに比べて2周り程体が大きく、その眼が赤く輝いている。


こいつの情報は分かってはいない。

だから慎重にとそう考えた瞬間、背後からの炎が俺の頭上を飛び越え兵隊蟻にヒットする。


「ぎしゅあああああ」


兵隊蟻の全身が燃え上がり、一瞬で灰になる。

後ろを振り返ると、テアが杖を翳していた。

恐らく彼女の魔法だろう……が、人の上通すのとか止めてくんない?

びっくりするから。


「戦闘中によそ見は良くないわ」


注意されてしまった。

少し言いたい事もあったが、確かに尤もな意見ではあるので俺は目の前に意識を集中させる。


「片付いたな」


何匹か蟻を切り殺した所で、あっさりと戦闘は終了する。

かなりの数だったが、殲滅に物の5分もかからなかった。

どうやら他のパーティーも、うちのパーティーメンバーと同じぐらいの力量は有りそうだ。


「へっ、張り合いのねぇ奴らだったぜ」


「直ぐに援軍が来るだろうね?それでどうする?ここで待ち受けるか、それとも3手に分かれて進むかい?」


この広い空間への出入り口は4か所だった。

入ってきた場所を除けば、進む道は3か所だ。

3手に分かれるっていうのは、一か所一パーティーで進むと言う事だろう。


個人的には纏まって迎撃するのが安全そうに思えるが、モロゾフさんもライラさんもそんな気は更々無さそうだ。


「ここで待ち受けるなんざ時間の無駄だ。お前らんとこはどうだ?」


「問題ねぇよ」


3つ目のパーティーのリーダーからも、それでいいと返事が返って来る。

まあさっきの数を3パーティーとはいえ、あっさり殲滅できたのだ。

個別で十分と言う事なのだろう。


合同パーティーは一戦だけして即解散。

俺達は再び6人パーティーで狭い通路を進む。

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