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第八話 諦めかけのゼス(ゼス視点)

ブックマークをありがとうございます。


今回は、ゼス視点でお送りしましょう。


それでは、どうぞ!

 我がウォルフ王家は、とある宿命に縛られている。それは、運命の番、もしくは半身と呼ばれる最愛の人を見つけなければ、二十から先の年を数えることができない、というものだ。ただ、それは、二十年以上生きられないというのとは違う。もしも、運命の伴侶をそれまでに見つけられなかった場合、その肉体と心は、強制的に眠りに落ちるのだ。



「俺も、後一月で二十、か……」


「まだ、諦めるには早いかと。探していない場所は多く存在いたします」



 そんな王家に生まれた第一王子。それが俺、ゼス・ウォルフだ。銀の長く結わえた髪に、王家の証である黄金の瞳を持つ俺は、この王家の祖であるゼノア・ウォルフに瓜二つだと言われていた。


 歴代の王族の中には、やはり、半身を見つけることができず、眠りに就いた者も居た。そして、数百年の時を経て、半身が目の前に現れ、目覚めるなどということも幾度か起こっている。

 この眠りは、呪いだ。だから、半身が現れるまで、肉体も心も、その時を止め、何者にも傷つけられない状態になる。



「そんな泣きそうな顔をしなくとも、いずれ、俺の半身が現れた時、俺はちゃんと目覚めるぞ?」


「……分かっております」



 泣きそうな表情で、必死にそれを我慢するのは、俺の大切な側近であり、もし、俺が半身を見つけることができたなら、宰相の地位が約束されている男だ。赤く短い髪に、青い瞳を持つ童顔のアルスは、最近、自分が幼く見られるのが嫌で、モノクルをかけるようになったが……正直、似合わない。本人も途中で自覚したのか、俺の前以外でかけることはなくなったが、今もなお、色々と試していることを知っている。



「……心残りは、お前を宰相にしてやれないことくらいか?」


「そんなの、構いません。私は、元よりゼス様以外にお仕えするつもりはありませんので」



 元々、アルスは俺が眠りに就いたとしても、他の兄弟達の下で宰相となることを望まれていた。しかし、アルスは俺以外は嫌だと、その全てを蹴って、今、この場に居る。



「お前くらいだぞ? そんなことを言うのは。見ろ。もう、半年前には、他の奴らは諦めて、俺の弟達についたぞ?」


「彼らが薄情なだけです。私は、決して諦めませんから、そのおつもりで」



 第一王子ということに加え、先祖返りとされた俺には、多大な期待が寄せられていた。そして、実際、俺は他の兄弟の中でも優秀な部類に入るのだが……半身を見つけられなければ、元も子もない。きっと、俺はもうすぐ、眠りに就くのだろう。そして、目覚めた時には、誰も見知った者が居ない世界で、半身だけを愛する人間になるのだろう。


 この時、俺はまだ知らなかった。残り日数があと一日という時になって、半身を見つけることに成功するなんて。そして、彼女の存在が、大きな波乱を呼び起こすことにも、気づけるはずがなかった。

次回もまた、ゼス視点の予定!


それでは、また!

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