第七話 知らないネリア(ネリア視点)
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今日こそ、二人の名前を出さねばっ。
それでは、どうぞ!
「待て、まさか、オチ国のことを言っているんじゃないだろうな?」
「そのまさかです。あちら側の国となれば、そこしかありませんでしょう?」
彼らは、何を言っているのだろうか、と一瞬考えて、そもそも、あの世の国なんて知らないのだったと思い至る。
(私が知る世界は、あの国だけだもの……)
国、というのは、多くの人々が集まって、一つの力の元に集うことによって生まれたものであり、この世界には一つしか存在しない。だから、私達は自分の国のことを『国』としか言わない。なのに、どうやら彼らの中では国というのはいくつもあるものらしい。
「……その、なんて呼んだらいいのか分からないから、とりあえず、姫と呼ぶぞ? 姫、あなたは、自分がどこの国から来たのか分かるか?」
殿下と呼ばれた人からの問いかけ。ただ、それが私に向けられているはずがない。そう思って何の反応も示さないままでいると、『ダメか……』と落胆したような声が聞こえる。
「目が見えない上に、もしかしたら、声も出せず耳も聞こえない、とかでしょうか?」
「っ……それが全て、精神的なものだ、とでも?」
「そうなりますね。ですが、もしかしたら我々を警戒しているだけかもしれませんし、我々のことを話してみるのはどうでしょうか?」
「そうしてみる、か……」
真っ暗な闇の中、完全に目覚めてしまっている頭には、どうしても彼らの会話が耳に入ってきてしまう。そして、先程までは全く気にしていなかったのだが、もしかしたら、ここには私以外に、この二人しか居ないのかもしれないと思えてくる。
(気配が、それ以外にない、みたいだし……)
となると、彼らが話しかけているのは、幽霊でもない限り私ということになってくる。
「まずは、自己紹介だな。俺は、ウォルフ国の第一王子、ゼス・ウォルフだ」
「私は、ゼス殿下の側近であり、ラグス公爵の息子、アルス・ラグスと申します」
(……本当に、私に話しかけてるの? それなら、私も話さなきゃいけないんじゃあ……)
ようやく、戸惑いという感情が心の中に広がってきた私は、どうしようかとオロオロしてしまう。
「良かった。聞こえていないわけではないのだな? あぁ、そうだ。もしかしたら、姫はオチ国から来たかもしれないんだったな? 一応、観測者を呼んで確認はするが、もしもかの国から来たのであれば、他にも国がある、という事実すら知らないのではないか?」
(えっ……? どういう、こと? 確かに、私はあの国しか知らない、けど…………まさか、ここは……)
「姫様は、もしかしたらご自身が死んでしまったと思っておられるかもしれませんが、ここは、ちゃんと現実で、この世のままですよ」
心を呼んだかのようなアルスさんの発言に私は、目が見えずとも、ビクッと肩が跳ね上がるのを自覚した。
ようやく、現実を自覚しつつあるネリアちゃんですが……声、出せますかねぇ?
それでは、また!