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第六十七話 決意するゼス(ゼス視点)

 なぜ、ネリアさんがオチ国の浄化などしなければならないのかが分からない。そもそも、どうしてそういった力があるということになっているのかも分からない。

 夢でも嬉しいと応えるネリアさんが、今、嘘を吐いているとも思えず、何を聞くべきなのかを必死に考える。



「ネリアさんは……この国に留まろうとは思わないのか?」



 オチ国のこと、浄化のこと、役目のこと……聞くことは山程あるはずなのに、俺の口から出てきた言葉は、そんな言葉だった。



「……はい。私は、ゼス様に幸せになってもらいたいのです。だから、この国には居られません」


「……は?」



 なぜ、ネリアさんが居なくなることが俺の幸せに繋がることになるのか、全くもって理解ができない。しかし、ネリアさんの言葉はまだ続く。



「ゼス様は、半身の方と一緒に居るのがきっと幸せなんですよね。だから、私に構う必要はないんです。私は、ひっそりと消えますから」



 あまりにも見当違いな内容に混乱しながら、それでも、一つだけ、理解できたことがあった。



「俺の半身は、ネリアさんだ」



 よく思い返してみれば、俺は、ネリアさんにそのことを告げていない。ネリアさんの体調が落ち着いてからとか、色々と考えているのもあったが、何よりも、まだ良く知らないであろう俺のことを拒絶するのではないかという恐怖に言い出せなかった、というのが真相だ。



「ふふっ、夢の中のゼス様は、とっても優しいですね。このまま、夢から覚めなければ良いのに……」



 夢であることを否定しなかったのは俺自身。しかし、今は、夢であることを否定しなければならない時であるに違いない。そう思って、ネリアさんの顔を確認すれば、喜びと悲しみが入り混じった表情で、とても、苦しそうにしていた。



「ネリアさん……」


「ごめんなさい。こんなの、ダメなのに……。早く、未練なんて絶ち切って、オチ国をどうにかしなきゃいけないのに……」



 ポロポロと大粒の雫を落とすネリアさん。諦めたくとも諦められない。そんな思いが伝わってきて、不謹慎ながらも嬉しいという気持ちが込み上げてくる。



「それは、ネリアさんが俺のことを好いてくれていると捉えても良いのか?」


「……はい。ゼス様のことが、大好きなんです。諦めなきゃいけないと、分かってはいますが……今だけは、せめて、夢の中だけは……」


「あぁ、俺も、ネリアさんのことを愛している。俺の半身。俺の唯一。消えるなんてことは、絶対に許さない」



 いつの間にか、一人称を素に戻してしまっていることに途中で気づきながらも、俺は、そっと、ネリアさんの頬に手を伸ばし、その涙をそっと親指で拭っていく。



(絶対に、ネリアさんを守り抜いてみせよう)



 オチ国とネリアさんの力がどういう関係にあるのかは分からないが、ただそれだけが、俺の唯一絶対の使命だと分かっている。

 そのあと、泣き疲れて眠ってしまったネリアさんを寝台に運んだ俺は、外からそっと様子を窺っていた護衛達に後を任せ、自室へと戻る。



「オチ国……調べなければならない、か」



 そこから俺は、夜を徹しての調べ物作業を開始した。

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