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第六十四話 眠れないゼス(ゼス視点)

 あれから、しばらくネリアさんの側についていたものの、その間にネリアさんが目を覚ますことはなかった。

 何が、ネリアさんをあそこまで追い詰めているのか分からず悶々としながらも床について、全く眠れずに何度も何度もため息を吐く。



「……とにかく明日は、ネリアさんの側に居られるようにしよう」



 現在、取り掛からなければならない問題は、ルキウスとジェスのことと、天井が崩落した原因究明くらいのものだ。どちらも重要なことではあれど、ひとまずの手配は全て済ませているため、明日一日くらいはネリアさんの側に居られるはずだと思い、布団を被る。

 ただ、どんなに眠ろうとしても、目蓋の裏に、ネリアさんが苦しそうに眠る姿が過ぎってそれどころではなくなってしまう。



「……少し、動くか」



 もしかしたら、少し運動すれば眠れるかもしれないと、俺はそっとベッドを抜け出す。扉の前には、本来王族の護衛騎士が待機しているものではあるが、現在、俺の護衛騎士は居ない。ネリアさんに回したから、というのもあるが、個人的に仕事を頼んで抜けてもらっているということもある。

 誰に気兼ねすることもなく寝室を抜け出した俺は、どこへ行こうかと少しだけ考えて、庭へ出ることにする。そこは、ちょうどネリアさんの部屋が見える場所ではあるが、他意はない……はずだ。


 少し体を動かして、眠れそうであれば部屋へ戻る。そう考えていた俺は、庭でネリアさんの部屋へ視線を向けたまま、どうにも動く気になれなかった。



(ここで運動をすれば、ネリアさんを起こしてしまうかもしれない……)



 そう思うと、下手に音を立てるわけにはいかない。ただ……。



(まだ、苦しそうに眠っているのか……?)



 ネリアさんがまだ苦しんでいるようならば、側に居てやりたいという想いが膨らむ。そうして、どうしようかと迷っていると、ふいに、ネリアさんの部屋から物音が聞こえた。



「え……」



 ネリアさんの部屋の前には、優秀な護衛を置いている。彼らが侵入者にしてやられるなどということは、考えてはいない。ただ……何事にも例外がある、ということは、よく知っている。ヘイルの元にネリアさんが連れ去られたのは、その例外。聖者の異能を利用して、誰にも気づかれずにネリアさんを攫ったのだから。



「っ……」



 ネリアさんが危険かもしれない。そう思った瞬間、俺は駆け出していた。


 ネリアさんの現在の部屋は、二階にある。俺の方から見えるのは、そのベランダのみだったが、そのくらいの高さならば、どうにか登ることも可能だ。そして……。



「えっ?」


「えっ?」



 ベランダに顔を出したネリアさんと、ベランダまで登ってきた俺は、直接対面することとなった。

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