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第六十話 撃沈するゼス(ゼス視点)

 ベゼフ家は、半身の輩出という出来事以外に突出した何かがある家ではない。平凡な部類に入る家系であり、目立たないからこそ、ヘイルは協力者に選んだのだろうと思われる。そして……。



「あそこの娘は、ジェスの半身になる前と今とでは、随分印象が違う」



 一通りの職務をこなした俺は、ジェスの半身として祭り上げられた令嬢に関する報告を読む。むろん、この情報は俺だけではなく父上の方にも届いているものであり、父上とて、疑問を抱かなかったはずがないと思えるものだ。



(ヘイルの話が事実であれば、ネリアさんはこのベゼフ家の令嬢に命を狙われていることとなるが……)



 ネリアさん誘拐の裏にあったのは、ヘイルの懸念だった。

 ルキウスやジェスのこともあって、ネリアさんの存在は歓迎する者としない者とで分かれてしまった。そのため、ネリアさんの居場所を大々的に知らせることがないよう、必要以上の守りを固めることができなかったのだ。護衛が多くあてがわれれば、それは、そこにネリアさんが居るということの証明になってしまう。そう考えたからこその対応ではあったのだが、当然、それはネリアさんに危険がつきまとうということでもある。



(ヘイルの狙いは、ネリアさんの警備を厳重にするための建前を整えること。そうせざるを得ないほどに、ベゼフ家は、ヘイルの手から離れた動きを見せているようだが……)



 爵位からすると、シシエラ家が公爵家、ベゼフ家は侯爵家であり、シシエラ家の方が上ではある。しかし、その歴史はどちらも同じくらいに古いものであり、ベゼフ家は今まで目立ったことをしてこなかったために、その力が完全には把握できないという現状がある。


 ベゼフ家がネリアさんに牙を剥こうとする理由は定かではないし、まだそういった事実は認められないが、もし、それが事実であれば、ヘイルはネリアさんを守ろうとしていたのだろう。そう考えれば、天井が落ちてきた時、慌てて上を確認しようとした意味も分かるのだ。



(もし、ヘイルが事前にその情報を俺にもたらそうとしたとしても、それを信じることは難しかっただろうな……)



 きっと、まずはシシエラ家への不信感が先に出て、ベゼフ家にまで思考を巡らせることはなかった。守っているつもりでも、その視野の狭さが、ネリアさんを危険に晒したのだ。



「……ネリアさんに見限られる理由しか、出てこない……」



 そこまで思考を巡らせて、俺は、一人撃沈した。

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