第四十八話 手がかりを見つけるアルス(アルス視点)
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さて、アルスは正しい手がかりをゲットなるか!?
それでは、どうぞ!
案の定、姫様は私の問いかけに口籠ってしまう。しかし……。
「剣姫も守王も、貴族にだけ現れる、異能の持ち主、です」
「異能、ですか……」
一応は答えてくれた姫様。そして、異能と聞けば、心当たりもある。
「それは、それぞれ攻撃と守りに特化した能力ではありませんか?」
「っ、やっぱり、居るんですか?」
どこか、絶望的な表情を浮かべた姫様に、私はさすがに慌てる。ここは、存在しないと言っておいた方が良かったのかもしれないと。
ただ、そんなものは後の祭り。姫様の青ざめたその顔に、私は、どう声をかけるべきか必死に考えを巡らせる。
「はい、そのような名前ではございませんが、聖女と聖者、という名称で存在しております」
「聖女と、聖者……」
時間稼ぎの意味も込めて、そんな説明をしていた私は、ふいに、その本へと目を留めた。姫様が叔母上からもらっている本の数々。絵本から実用書までの様々な種類の本の中で、聖女が題材となった作品。別に、その本が異質なわけではない。たまたま、聖女と聖者という言葉から連想した作品に目をつけてしまっただけだ。しかし、姫様の目には、そう映らなかったらしい。
「あ……その、別に、私はそのことを知りたいわけじゃないんです。ただ、気になって……」
嘘だとバレバレな姫様の態度。しかし、聖女や聖者のことを知りたいというのが、どういった目的のためかが分からない以上、安易に教えるわけにはいかない。私達は、そういう存在が在るということだけ、昔から教えられ、時々、そういう存在になった者にだけ、聖女や聖者がどういった存在なのかを教えてきた。つまりは、ほとんどの者は、そういう存在が居るということしか理解できていない。
「……もしかして、姫様は、異能者に会ったことが?」
ただ、それはオチ国以外での話。もしかしたら、オチ国では歪曲した事実が浸透していたのかもしれない。例えば……。
「オチ国の異能者は、異能を姫様に使ったのですか?」
その異能を人に向けてはならない、という基本的な教育がなされず、虐待される者が居たのかもしれない。そして、それは当然のこととして浸透していたのかもしれない。
ギクリ、と体を強張らせる姫様を見て、私は、これ以上の追求を止めることにする。きっと、これより先は、姫様にとって負担だろうという判断だ。
(しかし、オチ国の異能者が、姫様を虐げてきた、ですか……。やはり、オチ国はさっさと滅ぼしたいですね)
「姫様、色々と教えていただき、ありがとうございます。しかし、どうやら紅茶は冷めてしまったようなので、淹れ直して参りますね?」
「え……? あ、あの……」
「失礼します」
姫様は困惑していたようだが、私はひとまず、姫様から離れることにした。姫様は、きっと、少し落ち着くための時間が必要だと思ったからだ。そして、叔母上とたまたま廊下で出くわすと、私は、叔母上に殿下への報告があるため、姫様の紅茶を頼むと伝えた。
微妙に当たっているような、そうでもないような……?
この情報は、どんな波紋を生むんでしょうかねぇ?
それでは、また!




