第四十五話 幸せのはずなネリア(ネリア視点)
ブックマークをありがとうございます。
今回は、ゼスを離れてネリアちゃんの視点です。
それでは、どうぞ!
私の日常は、あれから変わっていない。お城の中でマナーや常識を勉強して、ほっぺが落ちそうなほどに美味しい食事を少しだけ食べて、アルマさんやアルスさんに話を聞いて……。それは、私がオチ国の公爵令嬢であった頃からは考えられないほど幸せな日々。ただ、そこにゼス様が居ないことだけがとても悲しいとは思うものの、そんな贅沢は言えなかった。いや、そもそも、少しでも不満を漏らせば、この幸せが壊れてしまいそうで、とても怖かった。
「姫君、何か不都合はありませんか?」
「はい、大丈夫です」
「……そうですか」
アルマさんは、講義の終わりに必ずといっていいほど、そうした質問をする。けれど、私に不満などあるはずはない。こんなに素晴らしい生活を与えられて文句を言うなどあり得ない。
(でも……ゼス様に、会いたい、なぁ……)
そう思ってしまうのは、きっといけないことだ。ゼス様には、ちゃんと半身が居る。そして、私はただ、ゼス様に拾われただけの人間でしかない。ゼス様自身も王子様なのだから、私に構う暇などあるわけもない。
「……では、本日の講義はこれで終わりと致します」
「はい、ありがとうございました」
一応、少しずつではあるが、体がふっくらしたようなしていないような気もする。そして、目覚めていられる時間も長くなってきているし、運動もそろそろ取り入れてみようという話だって出ている。
新しい仕事のために、順調だと思われる今、不安に思うことなんてない、はずなのに……。この国ではない、オチ国で言われ続けた『落ちこぼれ』という言葉が、心の澱となって離れない。
アルマさんが退出して、一人っきりでソファに座る私は、じっと、自分の手を眺める。
剣姫の力は、自らの能力を具現化させることによって初めて使えるようになる。つまりは、具現化ができない限り、その能力すらも分からない、というわけだ。
(剣姫の力は、具現化が叶った瞬間に自分で理解してしまうって話だったけど……)
残念ながら、私はそれを経験したことがない。
剣姫だからといって、必ずしも攻撃にばかり特化しているとは限らず、稀に治癒だとか、強化だとかいう特殊な力を授かることもある。だから、きっと、幼い頃の私は、それを楽しみにしていた。自分の力で、守れる人が居るという事実がとても嬉しかったのを覚えている。
「確か、発動のための言葉は……『我、天より生を受けし虚ろの身。我が身を満たせ。我が身に巣食いて怨敵を滅ぼせ』…………やっぱり、無理、かぁ……」
この言葉で、私は剣姫としての力を手にするはずだった。しかし、それを告げたところで、私の手には何も具現化されることはない。やはり、私は剣姫として失格なのだと、分かっていたことではあっても、肩を落とさずにはいられなかった。
……いや、最初は、ゼス視点でも良いかなぁと思っていたんですけど、最後があれでしたからねぇ?
さて、ネリアちゃんの呪文はどうにも通じない模様。
ネリアちゃん、幸せのつもりでも落ち込んでますねぇ。
それでは、また!




